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Channel: 建築をめぐる話・・・つくることの原点を考える    下山眞司        
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「日本家屋構造」の紹介−12・・・・小屋組(こやぐみ):屋根をかたちづくる(その3)

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いろいろと時間がとられ、またまた間遠くなってしまいましたが、「日本家屋構造」の小屋組の項の続きを紹介します。

小屋組は、梁間:梁行の長さに応じて、いろいろな架け方があります。
今回の解説を紹介するために、先ず、「日本家屋構造」製図編から、梁間に応じた代表的「小屋組図」:梁の架け方の説明図を転載します(今紹介している「構造編」には載っていません)。


今回の最初は投掛梁(なげかけ ばり)の解説です。
投掛梁とは、上の図の左下の梁間4間半、および右上の梁間5間の図のように、梁間:梁行の長さが長いとき、単に梁を継ぐのではなく、中途に桁行通りに受けとなる横材を据えて、それを台として、その上で梁を継ぐ場合、その梁のことを呼んでいます。この投掛梁を受ける横材を、一般には敷梁(しき ばり)と呼んでいます(上の図では「ヒ」という符号がつけられています。江戸っ子の訛りでしょう)。
なお、桁行の横材だから敷桁だ、と言う方も居られます。
では、原文の紹介。

「第五 投掛梁
第三十九図の甲は、投掛梁の仕口:接続法の図。乙は敷梁の同じく仕口:接続法。
両者とも、追掛大持継(おっかけ だいもちつぎ)で継ぐ。
   註 追掛 台 持継と書くのが普通です。
      「日本建築辞彙」でも台持継です。

      この解説を読んで、これは仕口ではなく継手ではないか、と思われる方も居られるでしょう。
      私は、用語に拘ることはない、と考えています。
      英語では、継手も仕口も joint です。joint がいわば継手・仕口の「本質」なのです。
      つまり、長手に継ごうが、直交させようが、joint であることに変りはない、という認識。
投掛梁は、梁間が大きいときに、梁を十字に架け渡すときの方法で、先ず敷梁の下木を柱の上部に嵌め込み、上木を載せる。そこで使われる継手が台持継で、その方法は次の通り。
継手の長さは、梁の丈(せい:高さ)の2倍半程度。全体は鉤型の付いた相欠きで、図のように、接触面を斜めに殺ぐ。
長さの中ほどに深さ0.8〜1寸ほどの段差:すべり段を設け、下木、上木それぞれの先端に梁材の幅の1/4四方ぐらいの目違いをつくりだす。
   註 中央の段差部の斜めの形は、上木を据えるとき、滑って容易に下木に噛み合うようにする工夫と考えられます。
      すべり段という呼称は、このことから付けられたのでしょう。
下木の先端部は、丈を2寸5分程度として、上木の下端の形に合せて刻む。この部分を誂子口(ちょうし ぐち)と呼ぶ。
   註 「日本建築辞彙」では銚子口と表記。
      誂の字は「あつらえる」という意。上木の形なりに「あつらえる」ということなのかもしれません。
      あるいは、銚子は酒を入れる「とくり」。その口の形に似ている、ということからの命名か。
下木と上木の接触面:割肌には、1寸2分角ぐらいで長さ1寸5分程度の太枘(だぼ)を設ける。
投掛梁の下木を、渡欠き(わたり がき)で敷梁に載せ、上木を敷梁と同じく台持継で下木上に据える。
台持継の上部には必ず小屋束を建てなければならない(そうしないと、台持継の効用が無になる)。
また、上等の仕口の場合は、小屋束の根枘(ね ほぞ)は寄蟻(よせ あり)とする。」
   註 寄蟻 
      図のように小屋束の下端に蟻枘を設け、一方、梁の上端の束の所定の位置に蟻穴を彫り
      その穴に隣接して逃穴(にげ あな)を彫る。
      小屋束の根枘を一旦逃穴に落とし、次いで、束を蟻穴側に寄せる。
      その結果、小屋束は抜け難くなる。
      逃穴に埋木をする場合もあります。
      寄蟻は、鴨居などを吊る場合にも使われる確実な方法です。

「日本家屋構造」小屋組の次の項は削り小屋仕口の解説。
削り小屋とは、使う材を鉋削りしてつくる小屋という意味です。
簡単に言えば、使用する材が仕上りとして見えるつくり。
この項の解説も、最初に載せた各種小屋組の図を参考にしつつお読みください。

「第六 削り小屋仕口
第四十図の甲は、棟木(むなぎ)に垂木を彫り込んで取付けるときの方法を示す。
   註 この方法は、削り小屋でなくても用いられます。
乙は母屋桁または梁間に繋梁(つなぎ ばり)を架けて、そこに棟木を受ける束:棟束を建てる方法を示した図。この方法は、廊下などに用いられることが多い。
   註 これは、前掲「小屋組図」の上段中の梁間3間の場合の棟木の取付け方を示しています。
      この図は、繋梁を京呂で母屋に取付けています。
      この方法は、削り小屋の場合、あるいは廊下に限定されるわけではなく、一般の小屋にも使われます。

      なお、原文で母屋に「おもや」のルビがふってあります。
      「おもや」とは、普通は「身舎」「上屋」のこと。
      意が通じないので、ここでは母屋桁としての母屋:もやと解釈しました。
丙は、梁間が長いときに使われる二重梁を折置で取付ける場合の図。
   註 前掲「小屋組図」の右上、梁間5間の図の記号「ニ」が二重梁です。
図の丁は、[に一]の箇所では通常の小屋束を建て繋梁を掛け、[ほ一]の箇所では束の横腹に繋梁を差す納め方を示す。その仕口が図の戌。
   註 前掲「小屋組図」の右上、梁間5間の図の記号「ツ」。
二重梁、三重梁・・は、一母屋置きに架け渡すのが普通である。」


今回の紹介は、ここまで。
次回は、前掲の小屋組図右下にある「與次郎組(よじろう ぐみ)」などの説明。
その紹介のあとで、補足として、小屋組全般についてまとめたテキストを転載する予定です。

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