建築に係わる多くの方がたには、木造建築の継手や仕口を忌避したがる傾向があるように思います。
何となくややこしく、いろいろとあって、理解しがたい特殊なもの・・、と見えるからではないでしょうか。
その一方、多少でも継手や仕口を知っていると、それを、いやな言葉ですが、自らの《差別化》のためにひけらかす方がたも居られます。
「日本家屋構造」の書名にある「構造」という語は、普段何気なく使っている言葉です。
「新明解国語辞典」によれば、「構造」とは、「機械や組織などの構成のしかた。具体的には、全体を作っている部分部分の関係や、個々の部分の作られ方を指す」と説明されています。
継手や仕口は、まさに、木造の建物づくりの「構造」に他なりません。
木造建築の継手や仕口は、日本特有の技術ではありません(日本特有の技術と思われている方が結構居られます)。
日本に限らず、木で建物をつくる地域ならば、必ずその地なりの技術体系として、継手や仕口が蓄積されています(以前に紹介しました)。
もちろん、どの地域でも、机上の成果ではなく、現場の成果として蓄積されてきているのは言うまでもありません。
そして、これらの「成果」について、「構造」としての「研究」も行なわれています。
残念ながら、日本の場合、上記国語辞典の解説の後半:「個々の部分の作られ方」への言及は多少あっても、
前半の「全体を作っている部分部分の関係」への言及がほとんど為されていません。
こういった私たちの先達が長年にわたり蓄積してきた「成果」を、今生きる私たちが、ないがしろにしておいて、いいわけはありません。
私たちが、日本という地域で暮してゆく上で日本語という言語を自然に習得しているように、
私たちが日本で暮してゆく上で、「日本の建物づくりの技術」を自然に修得していて(あるいは、修得するのが)当たり前、と私は考えています。
ここで、「日本の建物づくり」と言っているのは、「洋」に対する「和」を意識する、などということではありません。いわゆるスタイル、ファッションとしての「和」とは関係ありません。
それは、「日本という地域に根ざした建物づくり」、という意味です。
それぞれの地域には、「それぞれの地域に根ざした建物づくり」があります。地域によって異なり、一様、均質、均一・・ではない、それが当たり前、ということです(もちろん、どこかに木造建築のルーツがある、などということもありません)。
先に「机上の成果ではない」と記したのは、そのためなのです。
さて、日本の建物づくりの技術=建物の組立てかた:構造、すなわちその基幹を成す「継手」や「仕口」について、かつて(社)茨城県建築士事務所協会主催の建築設計講座に際し作成したテキストがあります。
「建物の組立てかた」には、つくりあげた建物の「安定」の度合いを、いかなる程度にしようと考えるか・・・によって、いろいろな方法がある、と考えることができます。
つまり、仮のつくりで済ます場面から、数世代(少なくとも一世代)使うことを考える場面・・・に応じて、つくりかたにはいろいろある、ということです。
現行法令の諸規定は、「仮のつくりの建物を丈夫にする」という《考え》に基づいていると考えると分りやすい。
金物による補強は、日本の場合、仮のつくりの建物の補強を目的に生まれてきたのです。
もっとも、法令が、その点を意識していた、とは思えません。むしろ、すべてが「仮づくり」と思っている・・。
逆に言うと、ちゃんとしたつくりの建物には不要だ、ということです。
このテキストは、建物の組立てかた:継手や仕口:に、どのような方法があり、それぞれどのような性質・特徴を持っているか、などについて、私なりにまとめてみたものです。
その中から、「日本家屋構造」の紹介の進行にあわせ、随時、関係する事項を抜粋して転載することにいたします。
今回は、先回の「日本家屋構造」の紹介の末尾に載せた継手・仕口の条件や呼称の付け方などについての部分を再掲し、次いで、「土台まわりの仕口、継手」についてまとめた部分を載せます。
以下の図は、仕上り4寸角の材を想定して描いています。
また、現在の布基礎を前提としていますが、原理的・基本的には、往年の基礎上の土台(礎石、布石上に地面に近く据える土台)とまったく同じと考えてよいでしょう。
なお、説明には、現行法令の下での扱われ方についても注記してあります。
以上、再掲。
以下は、土台まわりについて
注 ?の場合、枘孔の深さ(枘の長さより若干長く彫るか、貫通させるか)は任意。
私自身は、不必要な深さに彫ることはない、と考えています。
?は、プレカットなどで多く見られますが、奨められません。
金物はたしかに強度がありますが、木材のような弾力性はなく、木材に馴染みません(次頁?の説明参照)。
注 ?は、二方向の土台と柱の都合三方を一体に組むことを考えた方法。
?は、二方向の土台を固めることを目的とした方法。柱の安定に弱点があります。
?は、柱の安定度を重視した一般的な方法。
?は、プレカットなどで多く見られるが、奨められません。説明では釘打ちの問題点を書いていますが、
ホールダウン金物を使うと、力がかかったとき、ボルト孔から木材が割れてしまう可能性があります。
次は、土台の隅の納め方のいろいろです。
注 ?は、前頁の?を隅に使う場合です。
片方の土台を、外側に出している点に特徴があります。
この方法は、一般に広く使われてきた確実な方法です。「つの」を設けてあるからです。
現在は、「大壁」:木部を隠す仕上げ:が増えたせいか、外に「つの」が出るのを嫌がる人が多いようです。
??は、「つの」の出るのを嫌った場合に使われる方策です。
いずれも、建物の丈夫さよりも見えがかりを大事にした方法です。
??は、手間を簡単に済ます方策。奨められません。
次も土台の隅の納め方ですが、柱の方を優先させる場合です。
注 ?は、「蟻」型を彫った柱を二方の土台に彫った「蟻型」に落とし込むことで三者を一体に組む方法。
??は、土台に段差があるときの納め方。
「布基礎」になってから、玄関などでこういう場面が生じます。
「布基礎」以前は、柱が地面近くまで下りているのが普通でしたから、こういう策は不要でした。
次の2頁は、土台の継手のいろいろです。
注 ??は、《プレカット》でよく見かけますが、奨められません。
?は、さすがに《プレカット》でもありません。
最後は、土台と大引きの納め方、大引きと床束の納め方いろいろ。
何となくややこしく、いろいろとあって、理解しがたい特殊なもの・・、と見えるからではないでしょうか。
その一方、多少でも継手や仕口を知っていると、それを、いやな言葉ですが、自らの《差別化》のためにひけらかす方がたも居られます。
「日本家屋構造」の書名にある「構造」という語は、普段何気なく使っている言葉です。
「新明解国語辞典」によれば、「構造」とは、「機械や組織などの構成のしかた。具体的には、全体を作っている部分部分の関係や、個々の部分の作られ方を指す」と説明されています。
継手や仕口は、まさに、木造の建物づくりの「構造」に他なりません。
木造建築の継手や仕口は、日本特有の技術ではありません(日本特有の技術と思われている方が結構居られます)。
日本に限らず、木で建物をつくる地域ならば、必ずその地なりの技術体系として、継手や仕口が蓄積されています(以前に紹介しました)。
もちろん、どの地域でも、机上の成果ではなく、現場の成果として蓄積されてきているのは言うまでもありません。
そして、これらの「成果」について、「構造」としての「研究」も行なわれています。
残念ながら、日本の場合、上記国語辞典の解説の後半:「個々の部分の作られ方」への言及は多少あっても、
前半の「全体を作っている部分部分の関係」への言及がほとんど為されていません。
こういった私たちの先達が長年にわたり蓄積してきた「成果」を、今生きる私たちが、ないがしろにしておいて、いいわけはありません。
私たちが、日本という地域で暮してゆく上で日本語という言語を自然に習得しているように、
私たちが日本で暮してゆく上で、「日本の建物づくりの技術」を自然に修得していて(あるいは、修得するのが)当たり前、と私は考えています。
ここで、「日本の建物づくり」と言っているのは、「洋」に対する「和」を意識する、などということではありません。いわゆるスタイル、ファッションとしての「和」とは関係ありません。
それは、「日本という地域に根ざした建物づくり」、という意味です。
それぞれの地域には、「それぞれの地域に根ざした建物づくり」があります。地域によって異なり、一様、均質、均一・・ではない、それが当たり前、ということです(もちろん、どこかに木造建築のルーツがある、などということもありません)。
先に「机上の成果ではない」と記したのは、そのためなのです。
さて、日本の建物づくりの技術=建物の組立てかた:構造、すなわちその基幹を成す「継手」や「仕口」について、かつて(社)茨城県建築士事務所協会主催の建築設計講座に際し作成したテキストがあります。
「建物の組立てかた」には、つくりあげた建物の「安定」の度合いを、いかなる程度にしようと考えるか・・・によって、いろいろな方法がある、と考えることができます。
つまり、仮のつくりで済ます場面から、数世代(少なくとも一世代)使うことを考える場面・・・に応じて、つくりかたにはいろいろある、ということです。
現行法令の諸規定は、「仮のつくりの建物を丈夫にする」という《考え》に基づいていると考えると分りやすい。
金物による補強は、日本の場合、仮のつくりの建物の補強を目的に生まれてきたのです。
もっとも、法令が、その点を意識していた、とは思えません。むしろ、すべてが「仮づくり」と思っている・・。
逆に言うと、ちゃんとしたつくりの建物には不要だ、ということです。
このテキストは、建物の組立てかた:継手や仕口:に、どのような方法があり、それぞれどのような性質・特徴を持っているか、などについて、私なりにまとめてみたものです。
その中から、「日本家屋構造」の紹介の進行にあわせ、随時、関係する事項を抜粋して転載することにいたします。
今回は、先回の「日本家屋構造」の紹介の末尾に載せた継手・仕口の条件や呼称の付け方などについての部分を再掲し、次いで、「土台まわりの仕口、継手」についてまとめた部分を載せます。
以下の図は、仕上り4寸角の材を想定して描いています。
また、現在の布基礎を前提としていますが、原理的・基本的には、往年の基礎上の土台(礎石、布石上に地面に近く据える土台)とまったく同じと考えてよいでしょう。
なお、説明には、現行法令の下での扱われ方についても注記してあります。
以上、再掲。
以下は、土台まわりについて
注 ?の場合、枘孔の深さ(枘の長さより若干長く彫るか、貫通させるか)は任意。
私自身は、不必要な深さに彫ることはない、と考えています。
?は、プレカットなどで多く見られますが、奨められません。
金物はたしかに強度がありますが、木材のような弾力性はなく、木材に馴染みません(次頁?の説明参照)。
注 ?は、二方向の土台と柱の都合三方を一体に組むことを考えた方法。
?は、二方向の土台を固めることを目的とした方法。柱の安定に弱点があります。
?は、柱の安定度を重視した一般的な方法。
?は、プレカットなどで多く見られるが、奨められません。説明では釘打ちの問題点を書いていますが、
ホールダウン金物を使うと、力がかかったとき、ボルト孔から木材が割れてしまう可能性があります。
次は、土台の隅の納め方のいろいろです。
注 ?は、前頁の?を隅に使う場合です。
片方の土台を、外側に出している点に特徴があります。
この方法は、一般に広く使われてきた確実な方法です。「つの」を設けてあるからです。
現在は、「大壁」:木部を隠す仕上げ:が増えたせいか、外に「つの」が出るのを嫌がる人が多いようです。
??は、「つの」の出るのを嫌った場合に使われる方策です。
いずれも、建物の丈夫さよりも見えがかりを大事にした方法です。
??は、手間を簡単に済ます方策。奨められません。
次も土台の隅の納め方ですが、柱の方を優先させる場合です。
注 ?は、「蟻」型を彫った柱を二方の土台に彫った「蟻型」に落とし込むことで三者を一体に組む方法。
??は、土台に段差があるときの納め方。
「布基礎」になってから、玄関などでこういう場面が生じます。
「布基礎」以前は、柱が地面近くまで下りているのが普通でしたから、こういう策は不要でした。
次の2頁は、土台の継手のいろいろです。
注 ??は、《プレカット》でよく見かけますが、奨められません。
?は、さすがに《プレカット》でもありません。
最後は、土台と大引きの納め方、大引きと床束の納め方いろいろ。