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Channel: 建築をめぐる話・・・つくることの原点を考える    下山眞司        
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「付録2 日本建築の開口部と建具・概要-2」

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 付録2 日本建築の開口部と建具・概要・・・建具の種類、納めかた 続き

 

 3.大壁の開口部:枠回り

大壁仕様の場合も、枠の取付けの点で柱幅を基準とする方が適切である。

 大壁仕様の枠回りの基本

① 建具の納まる部分(縦枠、敷居・鴨居)と、壁の見切になる部分(見切縁、額縁)で構成する。 縦枠の見込み寸法は、柱幅になるため、柱をそのまま使うこともできる(柱を仕上げておく必要がある)。 註 枠と見切縁を一体の材とすると、見込み寸法が大きくなり、良材を用いても狂いやすい(反る)。  縦枠、敷居・鴨居には、一般にスギ、ヒノキ、マツ、ツガ、米ツガ、米マツなどが使われ、額縁には、縦枠、敷居・鴨居と同材にする場合と、堅木を用いる場合がある。註 材の反りを考慮し、鴨居は木表を上端側、敷居は木表を下端側にする(開口側が木裏となる)。 額縁は、縦枠、鴨居に小穴を突き納める。額縁に壁しゃくりを設けると壁の納まりがよい。

② 縦枠と敷居・鴨居の見込み寸法は、軸組の柱と同一にし、縦枠を先行して敷居・鴨居を取付ける。一般に、縦額縁(見切縁)・横額縁(見切縁)の見込み寸法を同寸として、隅部は留めで納める。留めは最低でも下図の仕口にしないと留め面に隙ができる。 

③ 縦枠、敷居・鴨居、無目材の見付け寸法は、一般に1~1寸5分(約30~45㎜)以上。 額縁の見込み寸法は壁厚により決まるが、見付け寸法は任意(見えがかりによる)。

④ 引き戸では、敷居・鴨居に溝を彫る。真壁納めの場合に同じ(真壁仕様の枠回りの基本④項参照)。

⑤ 開き戸の納めは、真壁仕様の枠回りの基本⑤項にならう。戸当りを、枠と一体に加工する方法もある(確実ではあるが、材寸が厚くなる)。

⑥ 雨戸や多重の建具を外側に設ける場合は、真壁仕様の枠回りの基本⑥⑦項にならう。

⑦ 外部建具をアルミサッシとする場合は、真壁仕様の枠回りの基本⑧項にならう。大壁の場合、アルミサッシのつば部分は、壁に隠れる。

 

  4.真壁から大壁への切換え  

大壁仕様主体の建物内に和室をつくる場合には、枠回りの切換えが必要になる。

一般には、大壁に付け柱などを付け真壁風にする例が多いが、畳が小さくなり(特に3尺格子では)、全体に小ぶりの和室になる。以下では、真壁仕様と大壁仕様を併用する場合を想定する。

 真壁~大壁切換えの基本

① 大壁部分の柱も、真壁部分と同じ仕上がり寸法に仕上げる。

② 真壁部分の柱、方立位置、敷居・鴨居を優先的に決める。  大壁側の納まりは、「柱幅の枠+額縁(見切縁)」の構成を原則とする。

③ できるだけ、部屋の隅部は壁にする。

④ 隅を壁にせず、真壁と大壁が一面で連なる場合(和室と大壁の洋室が全面開口で連なる場合など)は、間仕切部の両端の柱に方立を添わせ、大壁側の壁を方立に納め、敷居・鴨居は方立で受ける。大壁側の縦額縁は省く(下り壁が横額縁で止まる形をとる)。

⑤ 間仕切部の一部に設ける開口部では、真壁部分の柱を利用し、縦額縁を柱に小穴を突き取付ける。   

 

 5.枠回り材:造作材の組み方 現在可能な施工法

 木造軸組工法の場合、真壁仕様の組み方、取付け方法を基本と考えると決めやすい。見えがかりだけを優先した簡易な取付けが多いが、長年のうちにかならず狂いが生じる。

真壁仕様の場合  各項目の[a]、[b]などの囲み記号は、勧められる方法を示す。

鴨居の取付け  a 柱あるいは方立に鴨居の形状を彫り込み、片方の彫り込みを深くしておき、やり返しで納める大入れの方法。手間がかかる丁寧仕事。  [b]柱間の寸法に合わせた長さの鴨居をつくり、両端木口に1分(約3㎜)程度の枘をつくりだし、柱に枘穴を彫り、柱間を若干開いて鴨居を納める。仕口に隙間ができない一般的な確実な方法で、専用のジャッキの応用で柱間を開く工具もある。 c 片方の端だけ枘をつくりだし、他方は上面から釘打ち止め。 d 柱間の寸法の材を上面から釘打ち止め、L型金物を添える場合もあるが狂い、隙間が生じやすい。

鴨居の途中   鴨居の長さが9尺(2,727㎜)を越えるときは、梁・桁から吊り束で吊る。吊り束は、寄せ蟻で取付けるのが確実。

 納まり詳細図(理工学社)より

 

納まり詳細図集(理工学社)より 寸法単位:㎜

敷居の取付け  [a]柱間の寸法に合わせた敷居をつくり、敷居の取付く一方の柱と敷居の木口に2個の待ち枘の穴を彫る。もう一方の柱と敷居木口に、1個の待ち枘の穴と横栓の穴を彫る。柱の待ち枘の穴に、堅木製の待ち枘を植え込み、敷居を落し、横栓を打つ。近世以降、一般に行なわれてきた確実で丁寧な仕事。                      [b]柱間の寸法に合わせた敷居をつくり、両端に待ち枘を設け落し込む。  [c]柱間の寸法に合わせた敷居をつくり、横栓の穴を、柱と敷居両端の木口に彫り、横栓打ち。  [d]柱間の寸法に合わせた敷居の両端の木口に1分(約3㎜)程度の枘をつくりだし、柱に彫った枘穴に横から入れる。 註 a~dでは、敷居の長さを、柱間の寸法より僅かにきつめにつくる。  e 柱間の寸法に合わせた敷居をつくり、側面から釘打ち。最も簡易な仕事。  f 窓などの場合、鴨居のbと同様な方法。   g 柱に敷居の形状なりの深さ1分程度の彫り込みを設け、下からすくい入れて下面に楔を打つ。手間がかかる。納まりはきれいだが楔がたより。 

敷居の途中   粗床面あるいは大引、根太上に飼いものを入れて調整。埋樫(うめがし)、敷居すべりを入れるときには、溝面で釘打ちまたはビス留めとすることもある。

 

 大壁仕様の場合

枠+額縁の構成とする場合を想定。取付け下地として、柱、半柱、まぐさを使う。註 大壁仕様の場合、加工場で枠・鴨居・敷居を組み、現場に搬入、飼いもので調整、釘留めとすることもある。

縦枠と鴨居   [a]真壁仕様の柱への鴨居取付け法dにならい、1分(約3㎜)程度の出の枘を鴨居両端の木口につくりだし、縦枠に彫った枘穴に組み込み枠裏側から釘打ちまたはコーススレッド締めとする。 b 鴨居を縦枠に突き付けで納め、枠裏側から釘打ちまたはコーススレッド締めとする。最も簡便な方法。狂いやすい。

縦枠と下地   a 枠材の側面:見付け面に額縁取付け用の小穴を突き、小穴部分で下地の柱または半柱に斜めに釘打ち。  b 半柱側からコーススレッドで留める。  c 縦枠の見込み面に9㎜φ×深さ10㎜程度の穴をあけ、釘打ちまたはコーススレッド留めの上、埋木。塗装仕上げで用いられる。

鴨居と下地   [a]鴨居の側面:見付け面に額縁取付け用の小穴を突き、小穴部分で下地のまぐさに斜めに釘打ち。  b まぐさ側からコーススレッドで留める。  c 鴨居の見込み面に9㎜φ×深さ10㎜程度の穴をあけ、釘打ちまたはコーススレッド留めの上、埋木。塗装仕上げで用いられる。

縦枠と敷居   [a]真壁仕様の柱への敷居取付け法dにならい、1分(約3㎜)程度の出の枘を鴨居両端の木口につくりだし、枠に彫った枘穴に組み込み、枠裏側から釘打ちまたはコーススレッド締めとする。          b 敷居を枠に突き付けで納め、枠裏側から釘打ちまたはコーススレッド締めとする。最も簡便な方法。狂いやすい。

敷居と下地   一般には、敷居側面から荒床に向かって斜めに釘打ちする例が多い。

額縁の取付け  a 額縁に設けた壁しゃくり部分から縦枠、鴨居に釘打ち。  b 見付け面に9㎜φ×深さ10㎜程度の穴をあけ、枠に釘打ちまたはコーススレッド留めの上、埋木。塗装仕上げで用いられる。

 

 日本家屋構造所載の造作解説図

 

 6.建具実例 

 旧西川家住宅の建具    旧西川家住宅修理工事報告書より抜粋

西川家は、滋賀県近江八幡市にある1706年建設の典型的な近江商人の家。以下に紹介する旧西川家住宅の建具は、近世末~明治にかけて行なわれていた製作法で復刻したもの。

1.板戸 土間と店座敷の境の板戸  

 

2.舞良戸 店 表玄関の縦舞良戸 

  旧 西川家 一階平面図

3.腰付障子  4枚引き腰付明り障子 奥の間(座敷)西面濡れ縁境 

4.片開き 板戸 台所どま北面   

 

5.板戸4枚(雨戸形式) 座敷~どま境  どまは外部と考えている。座敷のどま側に縁が設けられているが。この縁は、座敷縁と呼んでいる。これは、その境に設けた雨戸。仕様は、外に向く縁に設ける雨戸と同じ。 

 

 

6.腰付障子および雨戸   2枚引き 腰付明り障子+雨戸2本(戸袋付) 仏間(店裏)南面 

 

上図の明り障子外側の雨戸    

 

   現在では上框を設けるのが普通だが、昔の雨戸には縦框だけを樋端に入れるつくりが多い。  縦框相互に召し合わせを設け、猿棒で相互を連結し、はずれを防止している。  板の継ぎ目は内側で目板張り。 框の仕口は、きわめて丁寧。

 

 参考 障子について

元来は、衝立(ついたて)や襖の総称。近世以降、格子戸に薄い和紙を貼った明り障子(あかりしょうじ)を、障子と呼ぶ。 四周に框をまわし組子(くみこ)を格子状に組み和紙を貼る。  縦框は見付 9分~1寸1分(約27~33㎜)×見込通常1寸(約30㎜)、組子は見付2~3分(約6~9㎜)×見込5分(約15㎜)程度。組子は框に直接取付ける場合と、付子(つけご)を回す場合がある。 材料は、スギ、サワラ、スプルスなど。

 代表的な形状 

腰付(こしつき)障子:高さ1~1尺2寸程度の腰を設ける。腰障子とも呼ぶ。  腰高(こしだか)障子:高さ2~3尺程度の腰を設ける。高腰障子とも呼ぶ。  水腰(みずこし)障子:腰を設けない障子。「見ず腰」(腰が見えない)が転じたという。  猫間(ねこま)障子:上げ下げ障子。障子にガラスを組入れ、内側に、開閉できる小障子を設ける。  雪見(ゆきみ)障子:ガラス無しの場合を猫間、ガラス入りを雪見と呼ぶ、という説もあり、用語は一定していない。指示にあたり、確認が必要。

桟の割付は、かつては、和紙の規格(半紙判:約8寸、美濃判:約9寸)を基準としたため、一段あたり4寸、または4寸5分程度になる。現在は幅950㎜程度の紙があり、割付は自由。 なお、桟の割付けは、開口部の光の強さの調節、部屋の方向性などを考慮して決める。 

  通常の障子 雪見障子     雪見障子       普通の障子(付子なし) 

 

 

 


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