桐の花が咲いています。
新聞やTVの写真・映像を見て感じたことを記してみようと思います。
現場の実際を見ていませんので、誤解があると思います。その点ご了承ください。
私の印象に残ったことを順不同に書きます。[文言補訂 15.25]
1.古いと思われる建物で、貫を使い、木舞土塗壁で仕上げた建物、が意外と少ない。
差物・差鴨居も見かけなかったように思います。
縦胴縁を設け、筋交い(貫板:厚12㎜程度か)を張り、木摺・メタルラス張り・塗り壁仕上げが多いように見受けられた。
おそらく、1950年代以降:戦後に改築あるいは新築された家屋が多いのではないだろうか。
旧いと思われる瓦葺き建物に、いぶし瓦が少なく陶器瓦が多いように見受けられた。これも、戦後の改造・新造が多いことを示唆している。
つまり、建築基準法制定後の建築が大部分である、ということになる。
かつて(20年ほど前)、熊本大津町の辺りを訪ねたとき、旧いな、訪れてみたいな、と思う集落や建物が少ない印象を受けたことを覚えている。
これは、瓦屋根の普及が著しいことから見ても、一帯が、「先進地」であるからなのだろうか?
2.新しい建物には、建築面積が小さい総二階建の家屋が多く(ゆえに縦長の立体が多い)、形体を維持したまま転倒している例が多いように見受けられた。
それらは、基礎ごと転倒している場合、基礎から外れ、土台から上が転倒している場合、の二様があるようである。
いずれも、一見、架構自体:柱・梁に損傷が生じたようには見えない。
こういう転倒は、縦長立体ゆえの挙動 の影響が大きいと思われる。
この挙動を誘発したのは、基礎に建物が緊結されていたからではなかろうか。緊結されていなければ、建物は基礎上を滑ったと思われる。
かつて、阪神・淡路地震で、淡路島で実際に見た記憶がある(布石の上を滑っていた)。
基礎に緊結されていると、土台より上の立体が、緊結されている土台を基軸にして転倒するのである。どの位置の土台が基軸になるかは、地震次第。
そのとき、おそらく多くの場合、アンカーボルト部で土台が割裂しているのではなかろうか。
そして、地盤が軟弱のところでは、基礎ごと転倒に至ることになる。
なぜ、建屋が形状を維持したまま転倒するのか。
多くの転倒事例は外壁面に開口部が少なく、多分、一階、二階が同一面で立ち上がり、各面の壁部分が多いからではなかろうか。
3.古い建築面積が大きい二階建の場合(ゆえに、横長の立体になる)、一階部分が破砕し、二階部分がその上に落下している例が多いようである。
同じく古い平屋建ての場合では、軸組部が破砕し、小屋組が瓦屋根ごとその上に落下している例が多いように見える。
これは、破砕部分:下部に比べ、その上部の重さが大きく、上部に生じた挙動・変動と下部に生じた挙動・変動の差が大きかったことに拠ると思われる。
しかも、二階部分はおそらく多数の部屋が設けられているだろうから(つまり間仕切り壁が多い)、一階に比べ、立体としての固まり具合が強いはずで、
ゆえに一階よりも変形しにくい。同じく小屋組は、切妻も寄棟も、下部の軸組部よりも立体としての固まり具合が大きい。
その結果、大きな揺れが生じると、変形しにくい上部が変形しやすい下部を押し潰す格好になるのだと思われる。
RCの建物で、いわゆるピロティ形式の一階が潰れている例が多々見られたが、それも同じだろう。
これらの事例は、端的に言えば、上下が一体になっておらず、いわば積木を積んだような形になっていた、と言えるだろう。
4.建物の耐震とは、地震にともなう挙動を止める:抵抗することではなく、挙動に耐える:持ち堪えることである、とあらためて思った次第です。
そして、そのための策としては、建物全体を一つの立体架構として考えることが必須ではなかろうか。
それはすなわち、いわゆる「伝統工法の考えかた」に他ならない。
5.今回の報道でも、地震後も健在の事例の写真、映像が少なかったように思います。
被災事例、健在事例を同等に(客観的に)扱う報道がほしい、といつも思う。そこから分ることは測り知れないからです。
人が犬を噛んだならニュースになるが、イヌが人を噛んだのではニュースにならない、という例え話を聞いたことがあります!
以上、きわめて大雑把な感想を書かせていただきました。
現地に実際に行かれた方がたの詳しいお話をうかがいたいと思います。
追記 [5月3日 9.35追記]
以前の記事「とり急ぎ・・・『耐震』の実際」もご覧ください。