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Channel: 建築をめぐる話・・・つくることの原点を考える    下山眞司        
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「日本家屋構造・中巻:製図編」の紹介−14 :門の部(その1) 「二十三 冠木門」

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[文言追加 14.55][リンク先追加 20日 10.15]
製図編の最後の項目は「門」。近世の武家屋敷などで設けられることが多かった「冠木門(かぶきもん)」「腕木門(うでぎもん)」「塀重門(へいじゅうもん)」の木割の概要と、製作に要する手間(人工)の概略が紹介されています。
今回は、分量の点で、その内の「冠木門」の項を紹介します。
特に分りにくい部分はありませんので、現代文読み下しはせず、原文及び図jを編集・転載(不揃いや歪みがありますがご容赦ください)、用語についての註記と私なりの所見を付すだけとします。
なお、原文では、各所の寸面について詳細な木割が述べられていますが、実例を見ると、必ずしもこの木割・比率に拠っているわけではありません。つまり、実際の仕事は、その場に応じて、設計・施工者の感覚に委ねられている、と考えられます。従って、原文にある木割等は、あくまでも一つの参考値である、と理解するのがよいのではないでしょうか。

はじめは、冠木門の項の原文と解説図。


   註 冠木門(かぶき もん):二本の柱上に冠木を有する門をいう。(「日本建築辞彙」新訂版 )
      冠木:門の扉うえにありて柱を連ぬる丈(せい)高き横木。柱を貫きて鼻栓にて飼固む(かいかたむ)。(「日本建築辞彙」新訂版 )
         解説図(第二十九図)の柱上に横木を架ければ、外見は鳥居様になる。
         鳥居では、上から二段目の横材、この図の冠木の位置の材、は貫:飛貫(ひぬき)として、柱に楔締めで取付けている。
         なお、鳥居の形状と部材名称については「鳥居の部材の呼称」をご覧ください。
         一方冠木は、材の全高を枘に刻み柱に差し、鼻栓で固定する。
         その結果、2本の柱と冠木は、礎石上に、強固な門形の枠を形成することになる(枠: rahmen )。
      解説文にあるように、柱の断面は、見付寸法>見込寸法とするのが普通。原文にある「比率」は参考値で、任意と考えてよいでしょう。
      見付寸法>見込寸法とするのは、柱と冠木が構成する枠:門形:をより強固に維持するための工夫と考えられます。
      しかし、門形の直交方向に力を掛ければ、つまり、押したり引いたりすれば、門形は容易に転倒するでしょう。それを避けるために設けるのが扣柱です。
      扣柱(ひかえばしら)=控柱 
         察するに、控の字の誤記に始まった表記ではないか。「日本建築辞彙」では、「控柱・・・俗に扣柱とも書く」とある。
      すなわち、図のように控柱を門内側に本柱の前に並べて立て、本柱〜控柱を上下2本の貫(上:控貫、下:足元貫)で縫います。
      図では、控貫に勾配を付けてありますが、水平でも可です。
         控柱を本柱の内外に2本設ける場合もあります(「鳥居の部材の呼称」中の写真参照)。より堅固になります。
         柱の転倒を防ぐもっとも簡単な方法は、斜め材で支える方法です。なぜこの方法が採られないのでしょうか。
         これについて、「鳥居に見る日本の建築技術の基本」及び「在来工法はなぜ生まれたか−5の補足」で触れてあります。[リンク先追加 20日 10.15]
      なお、本柱は、ほんばしら、おもばしらの二様の読みがあるようです。原文は前者、「日本建築辞彙」では後者。
         原本第二十九図立面図の右側の柱の表記「木柱」は本柱の、同じく「地腹」は地覆(ぢふく)の誤記でしょう。
      正面の扉を閉鎖時の通行に使うのが脇に設ける脇門(わきもん)の潜戸(くぐりど)です。
      脇門は、袖柱を立て、本柱〜袖柱を笠木と楣(まぐさ)で繋ぎ、笠木と楣の間の空隙には綿板(わたいた)を嵌め込みます。   
      楣:開口部の上部に設ける横材の一般的な呼称。鴨居も楣の一。
      綿板:物の間に差入れたる板をいう。恰も綿入れの綿の如くなる故、しか称す。(「日本建築辞彙」新訂版 )
         袖門は、本柱のつくりなす門形の枠の形状を維持する役も担っています。
      兜巾(ときん):頭巾とも書きます。柱の上端を四角錐状につくりだした部分の呼称。
      兜巾金物(ときん かなもの):兜巾部分をくるむ金物。金物の下端には円状断面の見切り部(覆輪:ふくりんと呼ぶ)を設ける。
      根巻金物(ねまき かなもの):柱下部の腐朽防止のための保護金物。兜巾金物と同じく、上端に覆輪を設けるのが普通。
      八双金物(はっそう かなもの):第二十九図・正面図の扉のように、柱側の縦框から嵌め板部にわたり取付ける金物。
      一般には先端が二股に分れるが、分れない場合も八双と呼ばれます。「日本建築辞彙」には、その役割についての記述はありません。
         単なる装飾ではなく、扉の変形防止のために、肘壷の取付く縦框と嵌め板:鏡板との接続を補強する工夫として生まれた金物ではないでしょうか。
         そう考えれば、二股にする意味も分かります。先端を二股に分けることで、釘打ち箇所:面が広がるのです。
      饅頭(まんじゅう):饅頭様の形をした金物、座金。
         釘隠しと同じく、大釘の頭あるいは先端などを隠すための装飾金物。
         第二十九図の扉中央の2個の饅頭は閂金物の先端隠し。
         本柱の上下の饅頭は、それぞれ大扉の肘金物の先端隠し。[文言追加 14.55]
      閂(かんぬき):扉を閉鎖するための横棒。閂金物は、閂を通すための金具。
         閂は、最近は見かけませんが、きわめて簡単な原理で、しかも強固な閉鎖方式です。

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以上で「冠木門」の項終り。次回は、「腕木門(うでぎもん)」「塀重門(へいじゅうもん)」の項を紹介します。

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