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昔の写真から : 諏訪の板倉

昔撮った写真の中に、板倉の写真を見つけました。
いくつか紹介いたします。ネガが見つからず紙焼きからのスキャンなので、今一冴えませんがご容赦。
30年ほど前、諏訪から佐久への蓼科越えの街道の茅野寄りで見かけた、と記憶しています。もう現存していないのではないでしょうか。

   
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土蔵のように見えますが、板倉に土塗を施していて、大きく剥落しています。
剥落部を撮ったのが次の写真。
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次は別の建物です。
はっきり覚えていませんが、一階部分は床下になっているのかもしれません。
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その土塗壁の剥落部分の近影。
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板壁への土塗の方法を知る手掛かりとなるのが次の事例です。上が妻側、下が妻〜平側の隅の部分。
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板壁に竹釘を打付け、下げ緒(下げ苧:さげお)を結いつけ土塗をしていた、と考えられます。
写真では分りづらいですが、竹釘が多少残存していたと思います。
下げ緒(下げ苧):麻の繊維は、トンボと呼ぶこともあり、木摺下地の塗壁の補強のために常用される手法です。
鉢巻になる部分には、縄がからげてあります。
多分、木摺下地とは違い、下地の厚板の収縮の度合いが大きいため剥落が起きやすいのではないか、と思います。
   木摺下地漆喰塗の仕様例を「煉瓦の活用と木摺下地の漆喰大壁」で紹介してあります。

以上の事例は板壁を柱間に落し込んでいるものと考えられます。
板は、全厚を柱に嵌めるのではなく、柱に小穴を突いて厚さの1/3〜1/2ほど嵌めているのではないでしょうか。板〜板の間にはとりたてて細工はしていないようです。
また、次の写真のように、隅部に柱を設けず、板を井籠(せいろう)に組んで納めた例もあります。板厚は、見たところ、2寸程度です(落し込みの場合もその程度でしょう)。
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屋根は、いずれも鞘組が設けてあります。
建物内に入って確認はしていませんが、本体の合掌部に板天井が設けられているものと思われます。
   鞘組については、「日本家屋構造・中巻・製図編の紹介−13 『土蔵』 」で触れています。
屋根勾配が緩く、軒の出が深いのは、諏訪地域の建物に共通しています。

板倉+土塗仕様は、諏訪地域に多いように見受けられます。
板倉にした上に土塗を施すのは何故なのか、分りません。
「土蔵風に見せるため」、などという「現代的な《理由》」ではなく、正当な謂れがあるはずです。
積層の板の間に生じがちな空隙防止のためか、とも思いますが、どなたか、ご存知の方、ご教示いただければ幸いです。

  この写真を撮った頃、同じ諏訪の原村の近在で、主屋の切妻屋根の形にあわせ整形した防風・屋敷林を撮った覚えがあるのですが、見つかりません。
  いずれ見つかったら紹介いたします。
  

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