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Channel: 建築をめぐる話・・・つくることの原点を考える    下山眞司        
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付録2-1 通し柱と2階床組-1

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付録1-2 継手・仕口の実際  PDF「継手・仕口の実際 土台~2階床組~軒桁」A4版26頁

2.通し柱と2階床まわり

図面の寸法指示は施工手順に応じた分りやすい指示が必要。
一次的な寸法:主要基幹部:軸組部の位置を先ず明快な寸法(ラウンドナンバー)で示し、次いで二次的な寸法:仕上げ床面位置等を、主要基幹部(土台天端、梁天端など)からの明快な数値(ラウンドナンバー)で示す。 →「確認申請」図書に記入の数値が゙、ラウンドナンバーである必要はない。

 

1)通し柱・管柱の役割

2階建て以上の建物では、一般に、通し柱と管柱を併用する。 

その配置は、平面:間取りを考えるときに、全体の架構を考えながら決定する(平面:間取りを決めた後に架構を考えると、無理が生じることが多い)。

通し柱:建物の隅部や中央部に立て、側面に二~四方向から横架材:胴差・梁が取付く。横架材の取付けのためには、仕口加工の点で、最低12㎝(4寸)角以上が必要である。 通し柱の役割は、1・2階を通しての垂直の基準となり、横架材の組立てを容易かつ確実にするためにあると考えてよい。現行法令は、原則として、隅柱を通し柱とすることを求めている(施工例第43条5項)。ただし、この規定から通し柱を設けると軸組の強度が上がる、と理解するのは誤り。 軸組の強度は、通し柱への横架材の取付け方(仕口)に左右される。

管柱(くだばしら) :1階においては土台と胴差・梁の間、2階においては胴差・梁と軒桁・小屋梁の間に立てる柱を言う。外力(荷重など)を効率よく伝えるため、通常は1~2間(約1.8~3.6m)間隔。管柱も隅柱と同寸(4寸:12㎝角以上)にすると、強度、壁の納まりの点で良好。平面の凹凸とおりに柱を配置する必要はなく、押入れ、床の間、棚などでは、半柱で造れる場合がある。

 

2)通し柱、管柱と横架材の組み方

胴差・梁に用いる材の長さには限界があるため、架構にあたり、①通し柱間に横架材を取付ける、②横架材を継手で延長する、③前二者の併用、のいずれかを選択することになる。  

具体的には、次の方法が考えられる(図は胴差と梁を天端同面の場合。胴差への梁の架け方は次項参照)。

    

架構法A:総2階の外隅柱、または2階部分の外隅柱を通し柱とする。 胴差・梁は、必要に応じて継手で延長し、1階管柱で支える。

架構法B:総2階または2階部分の外隅柱と、中央部付近の柱を通し柱とする。胴差・梁は必要に応じて継手で延長し、1階管柱で支える。 

架構法A、架構法Bは一般的に用いられる。

 

   

架構法C:総2階の外隅柱、または2階建部分の外隅柱を通し柱とし、 さらに、2~3間ごとに(通常、間仕切りの交点)通し柱を立て、通し柱間に継手なしで横架材を組み込む。江戸・明治期の商家・町家に多い。必要に応じて(横架材が長い場合など)、1階に管柱を立てる。横架材を表し仕上げにする(継手を見せない)場合に有効。確実な仕口が求められる。確実な仕口とした場合、架構は堅固になる。刻み、建て方に日数を要する。

架構法D:梁間中央に通し柱を並べ立て、両側に向け梁を出し、両端部を管柱で支える。 切妻屋根の場合、棟通りの通し柱を棟木まで伸ばし棟持(むなもち)柱とすることがある。 2階にはねだし部分やバルコニーを設ける際に応用できる。山梨県塩山、勝沼周辺の養蚕農家に多く見かける(例 塩山駅前にある重要文化財「甘草屋敷」)。

 

3)胴差・床梁・小梁・根太の組み方(床組):床伏の考え方

(1)床梁・小梁の位置  

床梁:通常1間(通常は6尺:1,818㎜)間隔以下に配置する。

小梁:丈45~60㎜程度の根太は、小梁を@0.5間(通常3尺:909㎜)以下に設けて支持する。

床梁、小梁の位置は、階上・階下の間仕切位置とずれないことが望ましい。仕上げにフローリングなどの方向性のある材料を使うときは、根太、小梁の方向の検討が必要。したがって、床梁、小梁の配置は、平面:間取りと並行して検討する。

 

(2)床梁・小梁の高さ:胴差に床梁・小梁をどの高さで納めるか 

 

組み方A 梁・小梁を、胴差の天端同面(てんばどうづら)に納める:矩計の計画が容易であり、階上の管柱の取付けにも問題が起きない。階下に管柱がない場合は、胴差の丈≧梁の丈であることが必要。

根太の納め方:① 胴差・梁・小梁に乗せ掛ける。根太は連続梁と見なせる。柱際に際根太が必要になる。

①-a 丈75㎜程度以下の根太の場合は小梁が必要。 

①-b 丈75㎜程度以上の根太の場合は胴差・梁へのかかりで床高を調整できる。根太のスパン(梁間隔)が6尺(1,818㎜)程度以下であれば、小梁は不要。

 

② 胴差・梁・小梁間に落とし込む:根太は単純梁となるので、通常は、根太の支持間隔は6尺(1,818㎜)程度以下、丈は75㎜程度以上必要になる(荷重と根太間隔による)。際根太は不要。根太による床高調整はできない。 

 

組み方B 梁を胴差に乗せ掛ける:胴差の丈<梁の丈の場合も可能。階上の管柱と梁の取合いに注意が必要。           

ア)梁の端部を胴差の内側に揃える:階上管柱を、胴差上に立てることが可能。ただし、柱と梁の取合いに注意が必要。→後掲6)(2)②で解説 

 

 

イ)梁の端部を胴差の外側に揃える:階上管柱は梁の端部に立てることになり、確実ななほぞがつくれず(短ほぞの扇ほぞになる)、不安定になるため、台輪を梁上に乗せ台輪に柱を立てる。

 

 

ウ)梁の端部を胴差の外側まで出す:胴差と梁の仕口も確実になり(渡りあご)、柱も梁上に長ほぞで立てることができる。梁の端部が表しになり、大壁仕様には向かない。なお、梁を外側に大きく出せば、2階を張り出すことができる(前項架構法D参照)。

いずれの場合も、根太の納め方には、①梁に乗せ掛ける方法(連続梁と見なせる)②梁間に落し込む方法(単純梁となる)があるが、ともに際根太が必要になる。

 

4)胴差・梁・桁の継手

胴差・梁・桁は曲げの力を受けるため、継手位置は、曲げモーメント、たわみが最大になるスパン中央部を避け、管柱から5寸~1尺(150~300㎜)程度持ち出した位置が適当。

力を伝達できる継手は追掛け大栓継ぎ、金輪継ぎなどに限られる(その場合でも、建て方時は不安定なため、管柱から5寸~1尺5寸:150~450㎜程度の位置で継ぐ)。

①追掛(おっか)け大栓(だいせん)継ぎ       (作図は仕上り4寸角を想定して描いています。)

   

曲げのかかる材(胴差・梁・桁・母屋)を継ぐときに使われる確実な継手。 継いだ材は1本ものと同等になる(継手を経て応力が隣へ伝わる)。上木と下木からなり、下木を据えたあと、上木を落としてゆくと、引き勝手がついているため両材が密着する。次いで、肉厚の厚い方から栓を打つ(2本の栓は打つ向きがちがう)。建て方の際、上から落とすだけでよく、また材軸方向の大きな移動も必要としない(多用される理由)。

側面に継ぎ目線と大栓の頭が見える。管柱の根ほぞ、頭ほぞは長ほぞが適切。継手長さは8寸(24㎝)以上、長い方が良い。手加工では、上木と下木のすり合わせを行うため、1日1~4箇所/人という。現在は加工機械が開発されている。

 

②金輪(かなわ)継ぎ          (作図は仕上り4寸角を想定して描いています。)

 

曲げのかかる材(胴差・梁・桁・母屋)を継ぐときに使われる確実な継手。柱の根継ぎ(ねつぎ)(腐食した柱の根元の修理)などにも用いられる。継いだ材は1本ものと同等になる。

継がれる2材A、Bの端部の加工は、まったく同型で、上木、下木の別がない。二方向の目違いの加工に手間がかかる。 A、B2材を図1のように置くと、目違いの深さ分の隙間があく。両材を寄せて目違い部分をはめると中央部に隙間ができる。そこに上または下から栓を打ちこんでゆくと、目違い部がくいこみ、図2のようにA,B2材が密着する。側面には、目違い付き継目線が見える。

追掛け大栓継ぎとは異なり、側面から組み込むため、建て方前に、地上で継いでおく方が容易。建て方時に継ぐには、追掛け大栓継ぎが適している。

 

③腰掛け 竿シャチ継ぎ(目違い付)

 

下木を据え、長い竿を造り出した上木を落とし、上面からシャチ栓を打つ。シャチ栓の道を斜めに刻んであるため(引き勝手)、栓を打つと材が引き寄せられ圧着する確実な継手。

材相互が密着して蟻継ぎ、鎌継ぎよりも強度は出るが、応力を十分に伝えることはできず、曲げモーメントは継手部分で0:継手箇所を支点とする単純梁になると見なした方が安全である。目違いは捩れ防止のために設ける。

 

④腰掛け鎌継ぎ(目違い付)+補強金物     ⑤腰掛け蟻継ぎ+補強金物

     

④腰掛け鎌継ぎ(目違い付)+補強金物:土台の継手参照。丁寧な仕事の場合は、鎌に引き勝手をつくり、上木を落とし込むと材が引き寄せられる。目違いは捩れ防止のために設ける。⑤の蟻継ぎに比べると、曲げがかかっても継手がはずれにくい。ただし、応力を十分に伝えることはできず、継手箇所を支点とする単純梁になると考えた方がよい。補強金物は、平金物が普通で、簡易な場合はかすがいが用いられる。③の方がねじれに強い

⑤腰掛け蟻継ぎ+補強金物:土台の継手参照。応力を伝えることはできず、継手箇所を支点とする単純梁になると見なせる。材長の節減、手間の省力化のために用いられる方法であるが、曲げがかかると鎌継ぎに比べ、継手がはずれやすい。 

注 ④鎌継ぎ、⑤蟻継ぎが胴差・梁に用いられるようになるのは、耐荷重だけを重視する工法になってからである。元来は、主に、土台や母屋などに使われてきた継手である(丁寧な場合には、母屋にも追掛け大栓継ぎを用いている)。

 

(「2.通し柱と2階床組ー2」に続きます。)


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