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Channel: 建築をめぐる話・・・つくることの原点を考える    下山眞司        
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継手・仕口の実際 土台と1階床組-2

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付録1-2 継手・仕口の実際

1-4)土台の継手       (作図は仕上がり4寸角を想定して描いています。)

a)土台を布基礎の上に据える場合:通常は下記の継手が使われるが、次項b)の布(ぬの)継ぎ、金輪(かなわ)継ぎを用いることもある。

 

      

①腰掛け 鎌継ぎ(腰掛け+鎌継ぎ): 腰掛けと鎌継ぎを組み合わせる。竿部分+鎌部分の全長は、 最小でも4寸(120㎜)必要(4寸鎌)。鎌に引き勝手を付けるとよく締まる (点線)。全長が長い方が、直線を保つ効果が大きい。

②腰掛け 鎌継ぎ(目違(めちが)い付):材下部の捩れを防ぐため、①に目違いを付け加える。①よりも確実。

 

 

           

③腰掛け 蟻継ぎ:一般に多く見られる継ぎ方。 竿がないので、継いだ二材を直線に保ちにくい。           

④腰掛け 蟻継ぎ(目違(めちが)い付):材下部の捩れを防ぐため、③に目違いを付け加える。 

 

  

⑤蟻継ぎ:丈1寸程度の蟻型だけで継ぐ簡易な方法。強度は弱い。

⑥全蟻継ぎ:材寸いっぱいの蟻型を設けて継ぐ簡易な方法。 材相互の不陸を起こしやすい。

⑦腰掛け+補強金物(かすがいなど): 横ずれを起こしやすく、金物が緩めば材が離れる。きわめて簡易な方法。    

 

b)土台下に布基礎がない場合(土台を独立基礎上の束柱で支持する場合など):梁・桁と同様と考える。

 

   

①布継ぎ:二材同型の鈎(かぎ)型に刻み、合わせ目の空隙に栓を打つと二材が密着する。きわめて堅固。桁・梁などにも用いる。

 

  

②金輪(かなわ)継ぎ(2階床組で解説):①を縦使いにした継手だが、*部分にも目違いを設ける。きわめて堅固。Bを水平に移動し栓を打つと、AB二材が密着する。桁・梁などにも用いる。 

     

       

③追掛(おっか)け大栓(だいせん)継ぎ(2階床組で解説):上木を落とし込み二材を密着させ、横から栓を打つ。きわめて堅固。 

以上の①②③は二材を堅固に接合する方法。普通は、④の腰掛鎌継ぎが一般的。架構を立体化するためには、少なくとも③追掛け大栓継ぎの利用が望ましい。

二材を密着させる方法として、現在はボルト・ナットによる締め付けが多用されるが、多くの場合、木材の収縮に対応できず、時間を経ると緩むことが多い。

これに対して、木製の栓や楔(割楔)を打つ方法は、弾力性・復元性(栓と打ち込まれる材がともに木材であるため、双方に弾力性・復元性がある)と相互の摩擦を応用したもので、打ち込み後の緩みが生じることはきわめて少ない(ただし、貫と柱の仕口に使われる楔は、振動により、しばしば緩むことがある。⇒清水寺の床下は、常に点検がなされている)。

 

                 写真は土台T字仕口:腰掛け蟻、継手:腰掛け鎌継ぎ(目違い付き)                                

④腰掛け鎌継ぎ(前項参照):使われることが多い継手だが、継手だけでは架構を一体化できない。継手に無理がかからないように注意する。たとえば、束柱相互が貫などで一体に組まれている場合には、継手に無理がかからないため、使用が可能である。

⑤腰掛け蟻継ぎ(前項参照):簡便である。                                                                 

 

 

5)材の割付け(規格材を使う場合)

①材端部の傷みの部分(両端それぞれ約15~30㎜ 計30~60㎜程度)は使えない。

②継手または仕口の長さの分、両端で相手の材と重なる部分がある。

したがって、材の規格長さ ≧{材端の傷み(約15~30㎜)+継手・仕口長さ ~ 継手・仕口長さ+材端の傷み(約15~30㎜)} 下図に一例を示します。

 

6)土台と大引の組み方・仕口、床束

a)大引の天端(てんば)を土台と同じ高さに組む :土台も根太を受ける。大引を土台と同時に組む。

   

 

b)大引を土台に載せ掛ける:土台際(どだいぎわ)に根太掛けが必要。柱通りの大引は土台際に束が必要。

  

 

a)大引を土台天端と同面に納める(天端(てんば)同面(どうづら)) 

        

①腰掛け 蟻掛け:腰掛けで上下の動きを止め、蟻ではずれを防ぐ。通常行われる方法。

②大入れ 蟻掛け:全蟻を造り出し、大入れで土台に掛ける。確実な方法。図のaが小さいときには不可(土台4寸角、大引3.5寸角とすると、aは0.5寸:15㎜程度しかない)。

 

  

③大入れ:大入れだけで納めると、収縮により、はずれることがある。 図のaが小さいときには不可。                   

④蟻掛け:簡易な方法。蟻首がとぶ(折れる)恐れがある。 

b)大引を土台に載せ掛ける:大引の土台にかかる部分について、上記(a)の②、③、④が用いられる。確実なのは②の大入れ蟻掛けである。                           

 

7)大引と床束の取付け

 

①目違いほぞ:床束頂部に目違いほぞを造り、大引からのはずれを防ぐため大引に彫ったほぞ穴に横からはらいこむ。

②吸付き蟻:床束の頂部に蟻型を造りだし、大引下端にその逆型を刻み、 床束を横からはらいこむ。①よりも確実な方法。

 

    

 

③びんた(鬢太)出し 釘打ち:材の一部を欠き取り、残った部分をびんた(鬢太)と呼ぶ。びんづら(鬢面)とも言う。床束の頂部をびんたにして大引の側面にあて、釘打ちで留める。床の振動で釘が緩む可能性もあるが、一般に行われる丁寧な方法。土台隅に使う向う大留めもびんたの利用。

④かすがい留め:現場あたりで長さを決め、床束の頂部を加工せず、大引下にはらいこみ、かすがいで留める。よく見かける簡易な方法。床の振動で緩む可能性が高い。

 

床束は、束石(礎石)を適宜配置し、場所ごとに高さを現場あたりで据えつける方法が一般的。基礎工事時点、基礎同様の精度で礎石を設置すれば、床束も加工場であらかじめ刻んでおくことができる。なお、大引面に不陸が生じた場合には、束の下部に楔を二方向から打ち込み調整する。

 

 

図版等ブログ内掲載記事:補足「日本家屋構造」-1・・土台まわりの組立てかた

 


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