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「第Ⅳ章ー3-C2目加田家」 日本の木造建築工法の展開

PDF「日本の木造建築工法の展開第Ⅳ章ー3-C1目加田家」

 

Ⅳ―3 近世の典型-3:住宅建築 

 C 住宅建築-3:武家住宅

 武家の住宅も、先ず全体の空間を構想しそれを分節させて各室を配置する、空間と架構を一致させる、という点では農家住宅、商家住宅と同じですが、武家の住宅には、ここまで見てきた農家住宅、商家住宅とはかなり異なる点が見られます。

 それは、接客空間の位置づけです。

 農家住宅、商家住宅でも、家人の居住空間に加えて接客空間が付設されることがありますが、その場合は、あくまでも、居住空間を先ず正当な位置に設け、次いでその端部に接客空間を設ける、という手順を踏むのが一般的です。

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 上の図は17世紀半ばにつくられた椎名家の復元平面図ですが、接客空間は東端部に用意されています。

 

 ところが、武家住宅では、接客空間が先ず設けられ、その残りの部分に居住空間をつくる、という手順が踏まれるのが一般的なのです。

 この独特のつくりかたには、すでに観てきた寺院の客殿建築の影響が大きく影響しているものと考えてよいでしょう。下の図は、その典型とされる17世紀初頭:1601年に建てられた園城寺・光浄院客殿です。

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 寺院の客殿は、寺院の本体あるいは庫裏とは別個に設置され、玄関から見て最奥の室で主人・当主が控え、そこへ向って客が伺候(しこう)する、というかたちに応じた室の配置がなされます。

 この接客のために用意された室の裏側に、接客を支えるためのサービス用の空間を並列させるのが一般的です。

 この形式の諸室を備えるつくりは、一般に書院造と呼ばれますが、武家住宅では、このサービス用の空間の位置に、家人用の空間が配置されるのが普通といってよいでしょう。

 

 こういう形をもつ武家住宅は、幕藩体制の崩壊にともない都市に集中した旧武士階級(多くは中級以下)が求めた住居にも大きく影響します。つまり、都市には、これまでの商家や庶民の住居とは別種のいわば書院造の亜流とでも言うべきつくりが生まれてきます。

 

 

C-1 目加田家住宅  18世紀末~19世紀初頃の建設  所在 山口県 岩国市 横山

 目加田家は天保の頃、岩国藩の御用人役を務めた中級の武士。

 南北39m×東西31mの約1200㎡(約400坪)の敷地のほぼ中央に建つ。

 

 

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                      図は旧目加田家住宅修理工事報告書より 

 

 接客部分3室を南面に横一列に並べ、その北側に家人の居住部を置く武家住宅の典型的な空間構成。

 いわば、南北2列配置の客殿建築:書院造(例:光浄院客殿)の北側サービス用諸室に家人の諸室をあてがったと見なせるつくり。

 南側に接客用玄関・式台を設け、玄関の間東側に脇玄関がある。

 目加田家では、南北2列の間に畳廊下を設けている。

 屋根を瓦屋根とし、主要な諸室に竿縁天井を張っている以外、架構・つくりには農家住宅と大きな差異は見られない。 四畳、二畳、畳廊下は、動線用の空間。

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南面 式台を見る                             日本の美術№296 武士の住居 より 

塀の内側は、座敷前の庭。 この瓦屋根の葺き方は、この地域独特の方法という。

 

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式台・玄関と脇玄関        日本の美術№289 民家と町並み(中国・四国) より

 

 

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式台 右手は土間入口へ  

 

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                    西側外観 縁の左は厠

 

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西側 遠景    

 

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                       東側 遠景            モノクロ写真は旧目加田家住宅修理工事報告書より 

 

 

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使用材料  礎石建て 自然石、式台は方形加工石  柱:マツ 平均4.0寸角  貫:マツ 厚0.65寸×丈3.5寸 継手 略鎌  内法力貫:マツ 厚1.7寸×丈7.0寸(玄関の間~次の間境)  足固貫:マツ 丸太材 末口4寸内外 角材 厚2.0寸×丈4.0寸 柱に枘差または略鎌楔締  差鴨居:マツ 幅3.8寸×丈9.0寸(台所まわり)

 

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 写真説明用キープラン

 

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次の間から見た座敷(視点A)          日本の美術298 武士の住居 より  

       

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四畳から裏手に並ぶ裏座敷、五畳の間を通して見る(視点B)

 

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四畳から二畳を見る(視点C)  

 

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                階段上がり端から見た2階室内(視点D)   白黒写真は旧目加田家住宅修理工事報告書より 

 


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