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Channel: 建築をめぐる話・・・つくることの原点を考える    下山眞司        
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日本家屋構造の紹介−4・・・・家屋各部の名称・その2

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今回は初めに「柱・壁まわり(軸組)」下図の赤枠内


字句注解では、「読み」のあとに、「日本建築辞彙(新訂)」の解説を転載します。
さらに補注として、別途解説をつけます(その文責は筆者にあります)。

  追記[11日 8.45]
  ここに原本から転載している図は、「家屋」の標準、もしくは「あるべき姿」を示しているわけではありません。
  あくまでも、「名称」を示すためのいわば概念図である、としてご理解ください。  

右側の赤枠内
 (ケ)は「屋根まわり(小屋組)」のときに触れます。

 (ハ) 柱 はしら ものを支承する為直立し居る木(英語 Post 独語 Stander )。
         補注 「主」は燭台の形。直立してその上端に蓋がある。柱は木の直立したもの。
             「楹(えい)」も柱と同義、ただし「円柱」をいう。
             「柱」は角・円のいずれにも用いる。
              以上「字通」より抜粋。
             注 英語では円柱を Colummn と記します。 

 (ヂヌ)地貫 ぢぬき 建築辞彙には項目なし。最下部に設ける「貫」。
        (註 原本のデヌは、印字の欠け、地「質」は、「貫」の誤植です)。
                             以上 再掲
 (ドヌ)胴貫 どうぬき 「腰貫(こしぬき)に同じ。すべて腰(位置)にある貫をいう。」
         補註 「腰」とは、ものの中ほどの位置を示す。

 (ウヌ)内法貫 うちのりぬき 「内法長押(うちのりなげし)の後方にある貫をいう。」
           内法 内側より内側迄をいう。
            (一)「柱内法距離」とは、柱の内側の、相去る距離をいう。
            (二)敷居より鴨居迄をもいう。
         補注 上記(二)は、現在も同様の意で使いますが、近世とは多少異なります。
             近世の「内法(寸法)」については「建物づくりと寸法−2」を参照ください。
             また、「長押(なげし)」については、「日本の建物づくりを支えてきた技術−7」
            「同−7の補足」を参照ください。

         補注 貫 「建築辞彙」では以下のように説明
            「?柱を繋連するための横木。?薄く且つ狭き木の出来合ものをいう。
             つまり?に記せし貫用の木なり。
             東京付近にては、大貫、中貫、三寸貫または小舞貫と称する杉の貫あり。・・・」    
             注
             現在も、「貫」あるいは「ぬき」の名で市販されている木材がありますが、
             ?に使用することを考えた材ではなく、「薄い小幅の板」を指しています。

左側の赤枠内 (ヱケ)(ケシ)(タカ)・・は「屋根まわり(小屋組)」で触れます。

以下(ヱ)(ヱカ)は前回の再掲 
(ヱ)縁板 えんいた 縁側の板をいう。
         補注 この図の場合、縁板=床板は、縁の長手に添って張られます。
             そのような場合を、特に「榑縁(くれえん)」と呼んでいます。
             「榑」:ふ 榑桑(ふそう)、神木なり。日出づるところなり。扶桑ともいう。
             たるき、まるた、くれ。(「字通」による)
             「くれ」:山出しの板材。平安時代の規格では長さ12尺、幅6寸、厚さ4寸。くれき。(「広辞苑」)
             これらの意から、なぜ「くれえん」になるのか、よく分りません。
             「長い」ということからでしょうか?
             「榑縁」は、薄い板材が加工できるようになってから現れますから、
             上記の「くれ」を何枚かに割った板を張ったからなのかもしれません。
             なお、当初の「縁」は、長さに直交して厚めの板を張るのが普通でした。

 (ヱカ) 縁框 えんかまち 縁束の面よりも突出せしめて、束に取付けたる横木なり。
         補注 この図の場合は、「框」上に雨戸用の溝(一筋溝:ひとすじみぞ)を彫ることを意図しています。
            框(かまち)
            建具(戸、障子など)の四周の枠にあたる部分や、仕上げの端部を納めるための部分を言います。
            例:玄関などの土間部分に面する床の端部に設ける「上り框(あがりかまち)」。
            「縁框」に根太を取付ける場合は、根太型に彫込みを設け、落し込みます。

次に「屋根まわり(小屋組)」 下図赤枠内


主屋部            
 (ケ)桁 けた 柱、束(つか)、壁などの上に据え付け、他の物を承けしむるための横木をいう。
         補注 桁 コウ 「行」には、ならぶものの意がある。
             ・・・「星の桁なり」梁上の桁。衣桁(いこう)やかせ(械・梏)の意に用いる。
             ?けた、柱にわたした横木。?ころもかけ。・・?算盤の位取り、けた。
             (「字通」による)
 (ハリ)梁 はり 荷を承けしむために設けたる横木(英語 Beam、仏語 Poutre、独語 Balken )。
         補注 ・・・必ずしも横木に限らず、飛石をいい、
             またそのようなところにかける笱(やな)を梁というのであろう。
             ?とびいし、やな。?はし、こばし。?よこぎ、はり、はしら、うつばり、くしがた。
              ?つつみ、どて。・・・・(「字通」による)
 (コツ)小屋束 こやづか 小屋組の束。かぶら束、与次郎束、枝束、棟束、・・など。
 
 (モ)母屋 もや 棟及び軒桁に並行して、垂木を支承する横木をいう(英語 Purlin 仏語 Panne 独語 Pfette )。
           案ずるに舟を繋ぐことを舫う(もやう)という。母屋は小屋の束と床とを繋ぐ如く見ゆる故に、・・・
           「もや」なる名詞を生じたるならんか。・・・

 (ム)棟木 むなぎ 棟桁(むなげた)をいう(英語 Ridge piece 独語 Firstpfette)。
          棟 屋根の最高の所(英語 Ridge 独語 First )

 (タ)棰 たるき 棟より軒に渡して、屋根板を支承せしむる木。「棰」は国字なり。
         補注 中国では、「椽」「簷」「檐」などの字が使われています。
            「椽」は「たるき」そのもの、「簷」「檐」は「軒・ひさし」部を指す語。
             古建築では、「地垂木(ぢだるき)」「飛簷(檐)垂木(ひえんだるき)」の語が使われます。

             「建築辞彙」には、「地垂木」は円にして、「飛簷(檐)垂木」は方(角材)なるが故に・・、
             とありますが、この呼称は垂木の断面形状とは無関係です。

             「地垂木」は、屋根を形づくる主たる垂木で、中国では通常「丸太」が使われています。
             これに対して、「飛簷(檐)垂木」は、「地垂木」でつくられた軒先部の先端に
             いわば化粧の(見えがかりをよくする)ために設けた「軒」です。
             「檐(えん)」は、一字で「のき」の意。
             よく見える個所のため、手をかけて方形・角材に加工したものと思われます。
             注     
             中国の家屋では、最近でも、垂木に丸太が使われています(「再検・日本の建物づくり−3」参照)。
             日本では、上級の建物で丸太を使うことは少なく、
             中国方式に倣うため、わざわざ角材を円形断面に加工した場合もあります。

             なお、「字通」の解説では以下のようにあります。
             「飛」は鳥が飛ぶ形からきた象形文字。高飛するもの、迅速・急速の意があり・・、
             ?とぶ、かける、はねる。?あがる、こえる。?はやい、とばす。
             ?はなれる、ながれる、ちる、さる。?たかい、そびえる。の意で使われ
            「飛簷」=「飛檐」=高く反りのある軒
             こうすることで、見栄えがよくなる、と考えられたのでしょう。
    参考 古代建築の「地垂木」「飛簷(檐)垂木」そして「野垂木(のだるき)」の図解は下記をご覧ください。
       「日本の建物づくりを支えてきた技術−8の補足」     

 (ハカ)鼻隠し はなかくし 軒先に於て、垂木の端(はな→鼻)を隠すための板。
         補注 これは、垂木の端部を隠す場合の図です。
             常に鼻隠しを設けるわけではありません。
             他の例を、別途紹介します。

 (ヒ)廣小舞 ひろこまい 廣=広 軒先に於いて、垂木上に取付けたる長き木なり。
              宮殿、堂社などに「茅負(かやおい)」を用うべき場合に、普通の家に於ては、
              廣小舞を用うるなり。・・・
         補注 「小舞」は「木舞」とも記します。
             「建築辞彙」では、「小間木(こまぎ)」の転訛したものではないか、とあります。

 (ウ)裏板 うらいた 物の後にある板をいう。
             ・・・屋根裏板(英語 Roof board)は、下より見れば垂木などの後にあり。・・・                            
         補注 この図の場合は、今は「野地板(のぢいた)」が普通の用語。

 (ノヌ)野地三寸貫 のぢさんずんぬき 野地に用いる貫(この場合は、幅が3寸のもの)
         補注 簡単な建物、あるいは屋根面の裏側が見えない場合には、前項の裏板:野地板を張らず、
            間隔を空けて貫を打ち、そこに瓦を葺くことも行なわれています。この図の主屋部はその例。

 (カサ)瓦桟 かわらざん 引掛桟瓦葺(ひっかけさんがわら)に於て、瓦の爪を承けしむるため、
                 野地(のぢ)に取付けたる木。
         補注 古代の瓦葺にはない。引掛桟瓦は江戸時代の発案という。

 (メ)面戸 めんど 「目処(めど)」の転訛なるべし。物と物との間隙、例えば、軒桁上の垂木間などをいう。
         補注 目処:?糸を通すための針の穴。?目あて。目途とも書く。
             ただし、?は針穴とも書く。(「新明解国語辞典」)

縁側部
 (ヱケ)縁桁 えんげた 縁側の軒桁をいう。
               縁・縁側:建物の外方の板敷なるところをいう。

 (ヱハ) 縁側柱 えんがわばしら 特に解説なし

 (ハ)柱 はしら 前掲

 (ヨ)淀 よど 広小舞の上にある木・・・。 
 (ヒ)広小舞 ひろこまい
  図のこの部分、「広小舞」と「淀」の位置が、上下逆です。
  「日本建築辞彙」所載の図を転載します。
    
   なお、軒先の納め方は、この図の方法だけではなく、他にいろいろあります。
   これについては、別途紹介します。

 (キ)木小舞 きごまい 木の小舞(木舞)
         補注 前掲「家屋構造」の断面図は、
             化粧垂木(次項)の上に、幅の狭い板を一定の間隔で渡し、
             その上に化粧の天井板:裏板を打ち付けています。
             これは、化粧の天井仕上げの一例です。
               別途、写真を探して紹介します。
             すべての庇部をこのようにするわけではありません。

 (ケシ)化粧棰 けしょうだるき 軒下に顕わるる垂木をいう。野垂木と区別するためこの名あり。
                     野垂木:鉋削せざる垂木。

                 一般に、隠れてしまう部分に使う材を「野・・」と呼ぶようです。
                 丸太のまま、あるいは表面の仕上げに拘らない場合を言う、と言えると思います。
                 野垂木については、上掲「日本の建物づくりを支えてきた技術−8の補足」参照。

 (タカ)棰掛 たるきがけ 垂木掛 差掛(さしかけ)屋根、または庇の屋根など於て、
                 垂木の上端を支承せしむるため、取付けたる横木。

以下については、〇化粧・造作部分のときに触れます。
 (トハ)床柱 とこばしら
 (ナ)長押 なげし                              
 (ヒカ)一ト筋鴨居 ひとすじかもい 
 (ムメ)無目 むめ 
 (ツ)付け鴨居 つけがもい 
 (カイ)鴨居 かもい 
 (シ)敷居 しきい 

次回は、主に化粧・造作部についての用語をまとめます。

蛇足 
ここで紹介している図は、おそらく、当時、一番普通に見られる上等家屋の仕様であったのだと思われます。
あくまでも一例です。

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