[註記追加、補注の表のズレ修正 24日 15.16]
原本は、「構造編」「図面編」とに分けてあります。したがって、結構読みにくい。
どのように編集すると分りやすいか考えた結果、今回は、「構造編」の解説文と、「図面編」の解説図を、隣り合わせになるように編集して載せる方法を採りました。
しかし、すべてがうまくゆくとは限りませんので、後になって変えるかもしれません。
今回は、紹介の試行版です。
なお、原本には汚れがありましたので、可能なかぎり消去しました。
今回の合併掲載部を印刷すると、若干ボケますが、読むことはできます。
もう少し鮮明な図版は、国立国会図書館の近代デジタルライブラリーで
「日本家屋構造」を検索して得られる PDF 画像から印刷できます。
ただ、その場合は、構造編、図面編別々に検索することになります。
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解説は、木材の成育場所による違い、日向か日陰かによる違いから始まります。
註 欠けて読めない文字
4行目最後の字:傾斜を「成」す
5行目最後の字:其下方に「面」したる(その下方に面した)
図中の字句の注解 文字は、右から左へ読んでください。
釿:ちょうな(手斧)音:きん、こん 普通は「手斧」を使うようです。
右下の図は、手斧の刃を正面から見たものと思われます。
鉋:かんな
墨壷:すみつぼ
墨指:すみさし
一段目は、木材の「腹」「背」の成因についての解説。
二段目は、木材の取得法ならびに往時の運送についての概説。第五図の右下の断面図の赤線は、原本では「太線」として表示されている部分です。
三段目は、木表、木裏について。(往時の)製材道具について。
四段目は、製材法の解説。
五段目は、木材の収縮の状態、木材のクセに応じた使い方について。
補 注
樹木の成長の仕組みと木材の性質、あるいは木材に含まれる水分などについての補足説明を、
一昨年の講習会(「伝統を語る前に」)で配布した資料から、抜粋して転載します。
ただ、資料中にあった写真は省きます。
1.樹木の成長の仕組み・・・・樹木は生き物
樹木は、樹皮とその内側の形成層と木部から成っています。
形成層とは、樹木の成長している部分です。
形成層は樹皮のすぐ内側の厚さは数分の1mmほどの薄い層です。
木部は、辺材(へんざい)と呼ばれる外側の部分、心材(しんざい)と呼ぶ内側の部分からなります。
製材された板などを見ると、白い部分と赤味を帯びた部分があります。
白い部分が木部の樹皮側の場所:辺材で、白太(しらた)と言い、
赤味を帯びた部分が木部の芯に近い:心材で赤身(あかみ)と呼んでいます。
樹木は根から養分・水分を吸収し、辺材を上昇して葉に至り光合成で新たな養分に変り、
樹皮部を降下して形成層に供給され、細胞が螺旋(らせん)状に増殖します。
そのため、製材後、材が捩れる原因になったり、螺旋状の捩れた木理が現れる場合もあります。
また樹木の成長は季節によって度合いが違うため、日本のように四季のある地域では、1年間の成長の幅を、
はっきりと読み取ることができます。
この1年間の成長の幅を年輪と呼んでいます。
成長の幅は、暖地では広く、寒地では狭く目がつんでいます。
目のつんだ材の方が、強度的には強いようです。
四季のない地域の樹木では年輪は見られません。
樹木の細胞は、幹の方向:軸方向に長い細胞と、幹の径の方向:放射方向に長い細胞に分けられますが、
針葉樹では、軸方向に長い細胞が95%を占め、広葉樹では80% 程度です。
ヒノキ・スギは30〜40年生で直径が30cm程度、高さは10mを軽く越えます。
このような細い樹木が、苛酷な自然環境の中で強風などでも折れずに立ち続けることができるのはなぜでしょうか。
針葉樹の軸方向の細胞の大きさは、一個の直径は数十μ(ミクロン:1/1000mm)、長さは数cmで、
幹の軸方向に細いストローを束ねたように並んでいます。
風などで簡単に折れてしまわない理由は、こういう組織が備えている特性にあります。
つまり、樹木の組織には、常に、外周側:樹皮の側では幹を締め付けるような力が、
上下方向では引っ張りあう力が蓄えられています。
強風で幹が曲がろうとするとき、このあらかじめ蓄えられている力で抵抗して、
簡単には曲がらず、よほどのことがないかぎり折れることもありません。
樹木を鋸で切ろうとしたとき、抵抗を受けるのもそのためです。
そして、樹木を伐採し製材すると、樹木の各部に蓄えられていた力が解き放され、
製材した木材に収縮や捩れなどを起こす原因の一つになります。
木材は、鉄などのように均質ではなく、部位によって性質が異なり、
さらに環境に応じて変動するのが特徴で、
木材を利用するときには、この特性に十分注意しなければならないのです。
2.白太、赤身の違い
樹木を構成している細胞の殻:細胞壁は、高分子化合物でできていて、環境の変化に応じて、
分子のレベルで水分を吸収したり、放出したりしています。
この水分のことを結合水と呼んでいますが、
生きている樹木の細胞は、
最大で、乾燥したときの木材の重さの30%にあたる大量の水分:結合水を吸収できると言われています。
特に、根からの水分・養分が通る辺材:白太には、水分:樹液が多量に含まれています。
まだ乾燥していない段階では、辺材:白太部分にはたくさんのカビが生えてることがあります。
樹木が成長すると、若いころに成長した形成層は活動をやめ、細胞の抜け殻が残ります。
この部分が心材:赤身で、
赤味を帯びた色は、細胞をつくっていたセルロース、リグニン、タンニンなどによるものです。
心材:赤身の細胞の抜け殻の空洞には、自由に水分が入り込みます。
これは普通の水で、自由に吸・放出を繰り返すので自由水と呼ばれます。
しかし、この部分は養分が少ないため、未乾燥のときでもカビもあまり生えません。
白太と赤身に含まれる水分の量を含水率で示した
未乾燥木材(生材)の含水率
材 種 辺材(白太) 心材(赤身)
ス ギ 223% 130%
ヒノキ 160% 42%
含水率が大きいと、含まれる水分量も大きいことを表します(含水率については後註)。
(愛媛県八幡浜地方局産業経済部林業課作成資料)
3.木を乾燥するとは、どういうことか・・・・木材の生態
木材を使うときは、よく乾燥した木材を使うことが大事と言われます。
しかし、木の乾燥について、一般に正しく理解されていないように思われます。
伐採した樹木を放置すると、最初に心材:細胞の抜け殻に入っていた自由水が蒸発し、
自由水が全部蒸発し終わると、辺材に含まれている結合水が蒸発を始めます。
そのまま放置を続けると、外気中の水分と樹木の中の水分が平衡の状態になり、
結合水の蒸発がとまります。
これが、樹木を自然乾燥させたときの状態で、気乾(きかん)状態と呼びます。
伐採した樹木を1年間放置すると、気乾状態になると言われています。
しかし、気乾状態のときでも、
木材に含まれる水分量は、年間を通して一定ではなく、季節や周囲の状況により変動します。
逆に言うと、周辺の環境の湿度を調節しているのです(調湿機能)。
木材は、季節や置かれた環境により含水率が異なり、
しかも樹種によっても、また同一の樹種でも1本ごとに異なり、同一のものはありません。
これも、鉄などと大きく異なる点です。
下の数値は、樹種別の平衡状態の含水量の年間の変化(平均値)です。
12?角3m芯持材の含水量の年間の変化
最高(7月) 最低(1月) 最高−最低
平衡含水率 18% 13% 5%
ス ギ 2710g 1960g 750g
ヒノキ 3500g 2530g 970g
(愛媛県八幡浜地方局産業経済部林業課作成資料)
註 芯持材とは、心材を含んで製材した木材を言います。
平衡状態になった木材を、さらに人工的に乾燥し続けると、含まれる水分は0になります。
この状態を全乾(ぜんかん)状態(絶乾(ぜっかん)状態)と言います。
しかし全乾状態を保ち続けることはできず、
普通の環境では、全乾状態の木材は空気中の水分を吸収して、平衡状態に戻ります。
樹種によりますが、平衡状態の含水率は15%前後と言われています。
けれども、常に一定なのではなく、上表のように、季節で異なるのです。
自然乾燥(天然乾燥とも言います)をしても人工乾燥をしても、
普通の環境の下では、決して木材中の水分が0になることはなく、
しかも含まれる水分の量も年間を通じて一定ではなく、
置かれた環境に応じて増減している、水分の吸・放出を繰り返すのが木材の重要な特性なのです。
この木材特有の性質を妨げると、
たとえば、外気との自由な接触を途絶えさせたりすると、重大な問題が生じてしまいます。
そして、この点についての理解が最も不足し、誤解も多いように思われます。
4.木材の含水率とは?
では、木材の含水率とはどういうものなのでしょうか。
重さが100グラムの木材を、全乾状態にしたら80グラムになったとします。
ということは、水分が20グラム含まれていた、ということです。
普通の感覚では、100グラムのうちの20グラムだから20%、と考えますが、
木材の含水率の定義は特別なのです。
木材の含水率は、含まれていた水分の量が、全乾状態:カラカラの状態の木材の重さの何%にあたるか、
という表し方をします。
この例では、
水分20グラムはカラカラの木材80グラムの4分の1ですから、含水率は25%ということになります。
計算例 含水率15%の木材100グラムに含まれる水分は何グラムでしょうか?
含まれる水分をaグラムとすると、カラカラの木材は(100−a)グラム
木材の含水率の定義によって
a÷(100−a)=0.15 → a=15−0.15a
∴1.15a=15
∴a=15÷1.15=13.043...グラム となります。
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以降、原本の紹介とともに、補足を加えてゆくことにします。