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Channel: 建築をめぐる話・・・つくることの原点を考える    下山眞司        
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“THE MEDIEVAL HOUSES of KENT”の紹介-30

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   Jettied construction
   Jettied construction とは、下図(fig49 再掲)の a b c d e のように、上階を突き出す(迫り出す)つくりで、次項の Wealden construction もその一つと言えるようです。
   註 jetty は突き出す、という意味の語のようです。日本語の「迫り出す」「跳ね出す」という意と解しました。
   

14世紀後期に進化を見せた新しい家屋形式は、ほとんどが jetty:突き出し:形式を採る。二階建ての建屋の階上部分を一~三方向を、宙に飛び出させる方法である。その理由について、 jetty:突き出し:形式の歴史とケントで用いられるようになった契機と時期について調べる必要があろう。
最近までは、英国の jetty:突き出し:工法が14世紀以前に発生したとの確証は得られていなかった。しかし、文献記録や遺構から明らかになった最新の諸証拠は、 jetty:突き出し:工法が既に13世紀に知られていたことを示している。
この技法が大陸から伝わったことも確かなようであるが、その時期については、地域によって異なり確かなことは分らない。ただ、この技法は、農村部に伝わる以前に、先ず町場で用いられたようである。ロンドンでは、1244年頃には既に見られ、その頃は、(突き出しが)通行人に目障りだ、と言われていたようだ。13世紀の遺構の中の jetty:突き出し:形式の実例が SUFFOLK の BURY ST EDMUNDS で発見された。農村部の建物では、OXFORDSHIRE ,THE VALE OF WHITE HOUSE , WEST HAGBOURNE の YORK FARM の jetty:突き出し:形式が年輪時代測定で1285年建設と判定された。その他の OXFORDSHIRE の事例も14世紀前期の建設と見なされている。ESSEX では、WIMBISH ,TIPTOFTSと、MAGDALEN の WYNTER'S ARMOURIE のcross wing :主屋に直交する増補棟:が13世紀後期~14世紀前期の間の建設と比定されている。

ケントでは、このような早い時期の事例は今のところ明らかではない。先に第4章(“THE MEDIEVAL HOUSES of KENT”の紹介-12参照)で触れたように、13世紀後期~14世紀前期の木造家屋で、居室部分が当初のままの形状を遺す事例は少ししかない。当時の家屋が、端部に居室のための部分を用意していたのか、それともcross wing :主屋に直交する増補棟を有していたのかも詳らかでないし、また、それらが二階建であったのかどうか、 jetty:突き出し:形式を採っていたのかさえも詳しく知り得ない場合が多い。
明らかに jetty:突き出し:形式の痕跡を遺している最古の事例は、IGHTHAM MOTE の東~西の棟で、1330年建設の石造・木造併用の建物だろう(下図 fig22参照:左端部が jetty になっている)。

jetty形式は、1322年建設の EAST FARLEIGH の GALLANTS MANOR の石造・木造併用の建屋、14世紀中ごろの建設のSMARDEN HAMDEN の木造建屋でも用いられていた可能性が高い。しかし、ケント農村部で、かなりのjetty形式の事例が、14世紀の後期:1375~1400年頃に見られ、その頃までには、この形式のつくりは、完成の域に達していた、と考えてよいだろう。
最も早い事例は、cross wing :主屋に直交する増補棟と Wealden constructionの双方にほとんど同時に出現している。 CHART SUTTON の OLD MOAT FARMHOUSE の1377年建設と記録されている cross wing と1379~80年建築の Wealden constructionの CHART HALL FARMHOUSE などがそれである。また、STAPLEHURST の COPPWILLIAM も、1370~71年頃の建築とみなして間違いないだろう。実際、 unjetty:突き出しなしの建物が現れるのは時期がやや遅くなってからであるから、ケント地域では、この時期、木造総二階の建物は、すべてが jetty:突き出し:形式であったと考えられる。
つまり、この地域で、 jetty:突き出し:形式の工法は、長い歴史がある、ということに他ならない。しかしながら、現在のところ、その起源や発展について、理の通った分析に堪える事例は、少ししか見付かっていない。
                                                                               この節 了 
     
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  先回予告のWealden construction の項は、複数節に分かれていますので、次回以降にまとめることにいたしました。

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筆者の読後の感想

   西欧の街並みで、両側の建物の上層階が道路上に突き出し(迫り出し)、あたかも道路がトンネルのようになっているのを見かけます。
   地上階を所有地の境界いっぱいに建て、上階を境界の外に突き出して(迫り出して)いるのでしょうか?

   そのあたりの実際について、ご存知の方が居られましたら、ぜひご教示ください。

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