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The heightening of low halls with open ends-in line
初期の高さの低い建屋は、使いやすい付属室を設けたいという要望に応える点でも大きな障碍となった。
既に触れたが、初期の石造家屋には(使いやすい部屋を設けた)二階建ての居室棟は普通に在ったが、14世紀後期以前に建てられたケント地域の木造家屋では現存事例はきわめて少ない。しかし、14世紀後期、15世紀初頭になると状況は一変する。多くの家屋では、hall と付属屋が共に現存し、更に、それら付属屋が、その後に増改築もされず原形の遺っている場合が多い。
最も初期の( hall に直交して建てられている)付属屋は、高さも高く、丁寧に造られている例が多い。例えば、CHART SUTTON の OLD MOAT FARMHOUSE( fig103a :下図)の1377年に建てられた総二階の建屋は、三方向に跳ね出し、crown post の屋根を架け、二階の主要木材には、当初の窓枠も含め、すべて丸面取りquater-round moulding)が施されている。
註 quater-round mouldingを「丸面取り」と訳しましたが、写真を見る限り、日本でいう「面取り」には見えません。
おそらく、「木材の各稜線を整えて仕上げてある」ということと解します。
この程度の造りの建物の多くは、この時期:14世紀後期:に建てられている。その一つに、SITTINGBOURNE の CHILTON MANOR の当初の aisled hall の端部を移設した桁行3間の建屋があるが、おそらく、以前から当該部は使いにくいと見なされていたがゆえに造り替えられたのだろう。多くの場合、端部に増補される建屋は、側壁を hall と同列上に揃え、aisle 形式で寄棟屋根とするのが普通であったから、改造はきわめて難しく、建て替えるしかなかったのであろう。
側壁を既存部に揃える建て方は15世紀中行なわれ、以前の事例と同じくfig57(下図) の LYDD の RYPE COTTAGE のような aisled 形式の高さの低い建物に多く見られる。その他の事例は aisled 形式ではない。
小さな室を増補できた fig51(下に再掲) の PETHAM の OLD HALL や、桁行1間の open hall の fig58(下図) のWESTBERE の ASHBY COTTAGE では、当初の hall の端部の上に二階が設けられている。
ASHBY COTTAGEは、おそらく1500年に建てられただけで、既存部に二階を挿入するなどの増補が何も為されなかったきわめて稀な事例である。この類の事例はほとんど残存しておらず、このような方策は当時当たり前であったものと思われ、(仕切り壁などのない)自由な梁間を持ち、側壁の高さが2~3mある建屋は、遺るべくして遺っていると言うことができ、それゆえ、更なる増改築にあたっても取り壊されないで済むのである。
高さの低い建物の側壁を、当初の形状全てを壊さないで高くすることも可能だった。時には、小屋組を承ける桁となる側壁を高くするために、従来の柱に添えて新しく高い柱を設けることが行われている。その一例が fig59b(下図) の SPELDHURSTに在る The OLD FARMHOUSE の hall である。あるいは、fig59a のDETLING に在る WELL COTTAGE のように、短い新しい柱を既存の桁上に据えて新設の桁を設ける例もある。また、SMARDEN の The DRAGON HOUSE や YALDING の NIGHTINGALE FARMHOUSE でも、束柱を立てて高さを上げている。
いずれの場合も屋根は架け替える必要があり、WELL COTTAGEのように架け替えに古材を再利用する場合もある。
しかし、このような手間のかかる改築はきわめて事例が少ないが、それはおそらく、人びとが、なるべく楽に建て直しをしたかったからではないか、と思われる。
註 「既存建物の取り壊し→新築(古材再利用も含む)」の方が、「既存建物の一部改築による更新」よりも容易である、という意と解します。
この節 了
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The problem of low ground-floor rooms in storeyed ends
The implications of partial survival
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 筆者の読後の感想
日本の場合、二階を設けるために柱を継ぎ足すという事例を、私は一度だけ、秩父の養蚕農家で見たことがあります(下の写真、柱の下の部分に継手部分が
かろうじて写っています。)
元茅葺の屋根を板葺に変えるときに(更にその後瓦葺になる)、大黒柱を継ぎ足したようです。そうすることで、小屋裏を天井の高い二階に変えて、養蚕の部屋
に使ったのです。その後、この形式の建物が一帯に定着し、新築の際は、最初からその形で計画されるようになったようです。
ところが、イギリスの木造は、増改築がかなり面倒くさそうです。秩父のような方策は、材料の点でも到底できそうにない。柱を継ぎ足すなどは論外。改築よりも
取り壊して新築することが多い、というのも納得がゆきます。
ここでも、改めて日本の木造工法の特色を再認識した次第です。