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Channel: 建築をめぐる話・・・つくることの原点を考える    下山眞司        
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「日本家屋構造・中巻:製図編」の紹介−9 : 「九 掛魚及蟇股」「十 虹梁及柱」「十一 舟肘木及び斗組」 

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   これまで書いたシリーズものへは、今までの「カテゴリー」ではアクセスしにくいと思いましたので、
   シリーズのタイトル(あるいはその要旨)で一式括る形に変更しました(単発ものは従前のままです)。
   ただ、最終回から第一回へという順に並びますが、その点はご容赦。

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今回の「掛魚及蟇股」「虹梁及柱」「舟肘木及び斗組」の章は、いずれも、「建物:住家の外観に《格》を付けるため」の、「上級に、恰好よく見せるための」諸策:「化粧」についての話です。

そこで、今回も、原文そのものの転載と、若干の註を付すだけにして、読み下しは省きます。



   註 原文では「掛魚」と表記していますが、「懸魚」と書くのが普通の表記です。
     懸魚(げぎょ)
     破風の拝下または左右に垂れたる飾(かざり)をいう。・・・(日本建築辞彙」)
     拝(おがみ)
     破風板の相会するところ。(日本建築辞彙」)
     切妻屋根の立面を描くと、破風板の拝の下部が、何となく心もとなく感じます。屈曲部が唐突に感じられるのです。
     また、木製の破風板の場合、拝下部に収縮による隙が生じることがあります。留めにした部分に生じるのと同じです。
     おそらく、そういった「不具合」の解消のために発案されたのが懸魚ではないかと推察します。
     手の込んだ懸魚を取付けると、そこに視線がゆき、「不具合」が気付かれないのです。     
     そして、上級の建物で「懸魚」が多用されたことから、「懸魚を設ける=格が高いこと」、という「形式」が一般に広まったのだろうと思います。
     蟇股(かえるまた)
     本来は、斗を支持する役を担っていた部材ですが、ここのそれは、これもあくまでも「化粧」のために付加される材です。
     これらの化粧材の懸魚、蟇股を、どのように取付けるのか、この書には説明がありません。
       これらを用いた建物の修理工事報告書などを見る機会がなく、設計したこともありませんので、私には分りません。
       どなたかご存知の方、ご教示ください。


   註 虹梁(こうりょう)
     柱間に架したる「楣(まぐさ)」の如き梁。
     その下部には「眉(まゆ)」を欠き、左右柱に接する近傍には「袖切(そできり)」を付すること普通なり。・・・(日本建築辞彙」)
     楣(まぐさ) 
     窓、入口などの上なる横木。
     眉
     虹梁または破風などの下方の繰形(くりがた)をいう。・・・(日本建築辞彙」)
     袖切        
     ・・・柱への取付き際なり。・・・(日本建築辞彙」)
     粽(ちまき)    
     粽形(ちまきがた)の略。柱の上下の弧形に窄まり居る部分。
     双盤(そうばん)        
     礎盤(そばん)のこと。おそらく、「そばん」の「読み」「音」を誤記したのではないかと思われる。
     なお、普通は、図中の「双盤」表記の材を「沓石」、「沓石」表記の材を「礎盤」と呼びます。                


   註 肘木も斗も、本来は荷を支えるための必要部材でしたが、ここのそれは、あくまでも化粧材で、荷を担う役はありません。
     この書に紹介されているのは、化粧材としての木割であり取付け法です。
     肘木、斗の荷を担う部材としての詳細は、古代の建物のつくりかたを参照してください。

     これは、西欧の建物で、実際には必要がなくなっても、柱頭にキャピタルを付けたがるのと同じ「感覚」なのでしょう。
     ときには、そうすることを《伝統》と勘違いする場面もあるようです。
     西欧の場合、その「感覚」「因習」を打破することから「近代建築」が動き始めたと言ってよいのではないでしょうか。

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次回は、これも、現在には縁が薄い章ですが、「上等家屋玄関」「起り破風造玄関」などの章の紹介になります。







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