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Channel: 建築をめぐる話・・・つくることの原点を考える    下山眞司        
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「日本家屋構造・中巻:製図編」の紹介−3 : 「三 住家を建設せんとするとき要する図面」-その1 

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「三 住家を建設せんとするとき要する図面」の章を紹介します。
原本で「要する図面」として挙げられているのは、「配置図」「平面図」「姿図(建絵図)」「矩計図」「地形根切図」「床伏図(足元図)」「小屋組(図)」です。
ただ、分量の点で、今回は「配置図」「平面図」「姿図(建絵図)」「矩計図」の部分を紹介することにいたします。かなり長くなります。ご了承ください。

   原本の用語を、現在の用語にすると、姿図(建絵図)=立面図、地形=地業、根切=根伐、になります。
   なお、「矩計」に、「かねばかり」の読みが付されていますが、現在は一般には、「かなばかり」と読んでいると思います。

     **********************************************************

はじめに、原本を載せます。







原文を現代風に読み下します。文中に表示の図は、読み下しのところに載せます。

三 住居を建設するにあたり必要な図面
住居を建設するにあたっては、一、二に於いて述べた要旨に基づき、次の諸図を制作することが必要である。
「大体の配置図」
考案された建てようとする家屋の大体の形状、門、庭園、塀・柵等の大きさ、位置などを示す図。

「平面図」
いわゆる「間取り(図)」で、上方から見下ろした姿を描くことから「伏図(ふせ づ)」と称することもある。
職業、生活の程度、家族数等によって「間取り」を決め、第一図(下図)に示す一定の符号により、「柱」「床の間」「拭板(ぬぐい いた)」「上げ板」「水流(みず ながし)」「戸袋」「縁」「梯子形(はしご かた)」等の位置、「壁」の位置、「建具の開き勝手」に至るまで、一目瞭然に分るように描いた図をいう。


   註 文中の用語 
     「拭い板」:平滑な床板(「日本建築辞彙」新訂版 による)
     「上げ板」:「揚げ板」とも記す。
            台所の床下などの如く、すべて物を貯え置く所の上なる板にして、取外し自在なるものなり。(「日本建築辞彙」新訂版 による)
     「梯子形」:梯子形の表記の意と解する。「階段」のこと。
            明治初期頃までは固定階段をも称した。(「日本建築辞彙」新訂版 による)
     第一図中の用語
     「榑縁(くれ えん)」:縁側の長さに沿うて板を長く張りて造りたる縁。(「日本建築辞彙」新訂版 による)
           榑(くれ):薄い板、へぎいた(へぐ:薄くはぐ)(「広辞苑」による)
     「榑縁 石畳」:「いしだたみ」:隅部で、板を図のように納める場合の呼び名
     「切目縁(きりめ えん)」:縁の長手に対して直角に板を張った縁。多くは幅広の板を用いる。
                     書院造、方丈などの「広縁」が「切目縁」
第二図(下図)甲は、平面図の一例で、家族5〜6人ぐらいが暮せる平屋建て23坪部屋数5の住居の平面図。玄関わきの8畳間を客間、他の広い部屋を家族が使う。下女部屋、台所などは図の通り。

   註 図の上方、縁の側が南、玄関側が北と思われる。
      図の右上の「三帖(三畳)」が下女部屋、その下の「土間」「拭い板」付の「三帖」が台所。
      煮炊きは「土間」。水甕が置いてあったであろう。「水流し」は、「土間」「板の間」双方から使う。(上下水道、ガスなどのない時代である!)
      家族5〜6人ぐらいが暮すには、上方の「八帖」間だけでは無理。日常は玄関わきの「八帖」:「客間」も使う想定だろう。

「姿図(建絵図)」
   註 「建ず(たて づ)」「起図(おこし づ)とも言う。
姿図(建絵図)は、建物が建ち上がったあとの外観(前面、側面、背面等)を描いた図で、施工者にとって大いに必要な図である。住家(すまいや)も一つの物品と同じで、その外観を忽せ(ゆるがせ)にできない。姿図で外観に不良な個所があるときは、小屋組や平面図などの再検討が必要になる。
   註 建築者:字の通り、住家を「建築する」者=施工者
      文中に説明はないが、 第二図 乙が、甲の玄関側(北面)の「姿図」であろう。

「矩計図」
建てようとする家屋の、柱に取付く各材の位置、仕口、構造(つくりかた)の大体の建地割(「割付け」)や、軒の出などを定める図を言う。その寸法等は一定ではなく、設計によって異なるが、一般的寸法をまとめると以下の通りである。
〇土台の下端〜畳の上端
  普通の住家  1尺4寸〜1尺7〜8寸ぐらい
  中等家屋   2尺3〜4寸
  御殿造(ごてん づくり) 2尺5寸〜  3尺以上とする場合もある
    なお、御殿造の場合は「切目縁」とし、階段、手摺等を設ける(切目縁の仕口は「構造編」参照

   註 上場=上端、下場=下端
     「御殿造」という用語は知りません。「御殿のような」大邸宅というような意の形容語か?ご存知の方、ご教示ください。  

〇内法高:敷居上端〜鴨居下端
  通常(柱芯〜柱芯6尺)   5尺7寸または5尺8寸
  京間(柱芯〜柱芯6尺5寸) 柱内法の幅を高さとする

   註 京間の内法高について
      「木割書」の一つ「匠明」では、「内法=切目長押上端(=畳下板床面)〜内法長押下端」=柱間(柱芯〜柱芯)とあり、     
      したがって、「敷居」上端〜「鴨居」下端=「切目長押上端〜内法長押下端」−「敷居の厚さ+鴨居の厚さ」になる。
      それゆえ、「敷居」「鴨居」それぞれの厚さ:丈(成 せい)を2寸、柱径を5寸と仮定すると、
      「切目長押上端(=縁の床面)〜内法長押下端」=柱間=6尺5寸
      ∴「敷居上端〜鴨居下端」=「切目長押上端〜内法長押下端」−「敷居と鴨居の厚さ」=6尺1寸
                                                            ≒柱間(柱芯〜柱芯)−柱径=6尺5寸−5寸=6尺
     光浄院客殿は確かにこの数字に近い。( 「建物づくりと寸法−2・・・内法寸法の意味」参照)
      しかし、京間の住居の実例を調べてみると、一般的に「敷居上端〜鴨居下端」=5尺7〜8寸である(5尺7寸が多い)。
      近江八幡西川家(商家1706年建設):5尺7寸 山口目加田家(武家18世紀末〜19世紀初建設):5尺7寸 今井町高木家(商家1840年頃建設):5尺7寸 など
          当初信州横田家を例に挙げましたが、横田家は京間ではありませんでしたので、外しました。目加田家は柱間6尺3寸です。[訂正 7日9.00]
     
〇小壁(こ かべ):鴨居または長押上端〜天井回り縁下端間の壁:の高さ
その室の畳数×2.5 or 3.0を高さとする。
  たとえば 六畳間の場合は、6×2.5 or 3.0 ∴1尺5寸または1尺8寸
しかし、大きな室では、内法高の 7/10〜8/10 ぐらいにすることもある。

〇その他 天井の張り方など
天井の張り方で注意すべきことは、「床の間」に向って「竿縁(さお ぶち)は「床」と平行に設け、板は、その矧ぎ目を柱または束柱の芯に置くか、板幅の中央に柱または束柱がくるように張る。
   註 書院造や方丈建築では、竿縁の向きについて、このような拘りはない(先の「建物づくりと寸法−2」中の写真参照)。

以下に、普通および中等家屋の「矩計図」を例示する。

「平屋建普通住家矩計(建地割)第三図(甲)」(第二図の住家にも応用)

   註 原本には縮尺 1/20 とありますが、上図は 1/20 ではありません。
総高さ 土台下端〜軒桁 峠:11尺6寸
これを以下のように細分する。
  土台下端〜敷居上端      :1尺8寸 ただし、敷居は丈(成い せい)2寸×幅 3寸8分
  内法高(敷居上端〜鴨居下端):5尺7寸 ただし、鴨居は丈(成い せい)1寸4分×幅 3寸8分
   註 原本の「鴨居」の「幅1寸5分」は誤記と思われます。敷居幅と同じと見なしました。
  小壁の高さ(長押上端〜天井回り縁下端):2尺2寸
  天井回縁上端〜軒桁上端(峠):1尺6分
   註 説明文では1尺5分とありますが、図に記載の寸法を採ります。
部材寸法 
   註 原文には「木割」とありますが、内容から、部材の寸法の意と解します
      「木割」とは、一般には、柱の太さを1として、それに対する比率で材寸などを示すこと(「日本建築辞彙」)を言います。
  柱  削立て(けずり たて)寸法 3寸8分角  
   註 「普通の」建物でこの太さ。現在の法規の最低《基準》10?角がいかに細いか!
  土台 削立て(けずり たて)寸法 4寸2分角
  大引 松丸太 末口 6寸
  根太 普通は 2寸角
  床板 6分板
  貫  地貫(ぢ ぬき)は「大貫」、他は「中貫」とし、「天井貫」を含め、5通り設けるものとする。
   註 「大貫」実寸 幅 3寸9分×厚 8〜9分(墨掛寸法で 4寸×1寸)  
      「中貫」実寸 幅 3寸2〜3分×厚 6〜6.5分 (墨掛寸法で 3寸5分×8分)
      現在市販されている「ヌキ」は、「中貫」よりも薄いことに注意。
  床板 杉 4分板
   註 「 削立て(けずり たて)寸法」 鉋削りをした寸法:仕上り寸法
      「墨掛(すみかけ)」寸法=木口に所要寸法を墨出しした時の寸法、製材すると鋸の厚さ分小さくなる 墨掛 4寸角⇒曳き割ると 3寸8分角程度
      「貫」などではそのまま使うが、柱などは、更に鉋をかけて仕上げる。
      ゆえに、当時の削立て(けずり たて)寸法 3寸8分角の柱は、墨掛寸法では4.5寸角ほどだったのではないか(製材後:曳割寸法で4寸角)
       現在は、曳割り4寸角をプレィナー仕上げて3.8寸角にしています。
      このあたりのことについて詳しい方、ご教示ください。 

「平屋建普通住家矩計 縁側の部 第三図(甲)」    
総高さ 本屋の屋根勾配に応じて定める。
柱の大きさは、削立て 3寸4分 角とする。
縁框は、丈(成せい)4寸×幅 3寸とし、上端を本屋の敷居上端より 1寸2分下がりとし、縁幅全体で 1/100の水下がりを付ける(この図の場合は 3分)。
   註 縁側は、雨戸を開けている昼間は、雨の吹き込むことがあった。ゆえに、水勾配を要した。
無目(むめ)は、成 1寸6分×幅 3寸1分、無目下端までの内法高は 5尺7寸とする。
一筋鴨居は、成 1寸8分×幅 2寸2分。
欄間:無目上端〜桁下端:の高さは 1尺2寸。
縁桁は末口径 5寸。
化粧天井の勾配は 3寸2分(3.2/10)。
軒の出は 2尺4寸、ただし、板葺の場合は、 2尺8寸〜3尺とする。
「右割柱の大さは・・」は、意不明
垂木掛:成 3寸5分×幅 1寸8分、化粧垂木:成 1寸6分×幅 1寸4分、淀:幅 3寸4分×厚 7分、広小舞:幅 4寸5分×厚 1寸2分。
裏板は、杉 4分板、上の野地(板)は、本屋の野地を葺き下ろし、広小舞の上端に突き付ける。
本屋の野垂木は 2寸角、野地(板)は 3寸(幅の)貫を小間返し(こま がえし)に打つ。
   註 棰=垂木
      小間返し:幅と「空き」を同寸にすること。たとえば、3寸幅の板を、3寸空けて張る。これを繰り返す。

「縁側」について、下記を参照ください。     
「日本家屋構造の紹介−14・・・・縁側、その各部の構造」
「補足・日本家屋構造−6・・・・縁側考」
また、日本家屋の開口部建具の変遷については下記に概要をまとめてあります。[追記 8日9.00]
「補足・日本家屋の構造−7」

「平屋建普通住家矩計 便所の部 第三図(甲)」
   註 第三図の姿図は、第二図の平面図の便所には対応していない。 
小便所床板上端は縁側上端より 8分以上上げ、大便所の床面は、これより更に 8分乃至 1寸上りとする。
便所外側の窓の高さは、床面から敷居上端まで 3尺5寸とし、敷居上端〜鴨居下端は 1尺5寸とし、それ以上の高さは縁側の高さとの取合いによる。
敷居は柱の面内に取付け、入口鴨居すなわち無目は、成 1寸3分×幅 3寸 として、入口の方立は、見付 1寸6分×見込 1寸8分、窓敷居、鴨居はともに成 1寸2分×幅 3寸 とする。
   註 文中の法立は方立と解す。なお、方立の見込寸法の 1寸8分は?
天井回縁(まわり ぶち)は、成 幅1寸4分×幅 1寸5分、竿縁は 5分× 6分ぐらいとする。
窓の外部に設ける屋根板および雨押えは、ともに杉厚 1寸の板とし、窓の格子は見付 6分×見込 7分、格子の貫は幅 5分×厚 2分とする。
外壁下見板の簓子(ささら こ)縁は見付 1寸×見込 8分、板は杉 4分板とする。
   註 外壁の仕様は、簓子下見:板を「羽重ね(は がさね)」にして、簓子(縁)で押さえている。
      羽重ね:雨水の流下をよくし、壁内への侵入を防ぐために、上に張る板の下端を下の板の上端に重ねて張る張り方。
      簓:竹の先を細かく割って束ねたもの。田楽などで簓子とすり合わせて調子をとるのに用いる。(「広辞苑」による)
      簓子:簓を擦るのに用いる細い棒で、鋸歯状の刻み目がつけてある。(「広辞苑」による)
      羽重ねの下見板を押さえる縁「押縁」には、羽重ねに合わせた段状の刻みを設けてあることから簓子と呼ぶ。
      「猿頭(さる がしら)」:図中「(便所)側面切断図」の窓屋根板上の材
      板庇または板屋根の板上に、所々に取付けたる木にして、上端に小返(こ がえり)付のものをいう。(「日本建築辞彙」による)
         「小返」付:上端に勾配を付ける。頂部を「鎬(しのぎ)」と呼ぶ。 

「平屋建中等住家矩計 第三図(乙)」
総高さ 土台下端〜軒桁 峠:14尺
これを以下のように細分する。
  土台下端〜敷居上端:2尺2寸 ただし、土台:削立て 5寸角、足固め: 5寸× 6寸、床板: 8分、敷居:成 2寸×幅 4寸2分
  内法高(敷居上端〜鴨居下端):5尺8寸 ただし、鴨居:成 1寸6分×幅 3寸8分
  内法長押:成 3寸8分×幅 2寸
  小壁の高さ(長押上端〜天井回り縁下端):3尺4寸
  天井回縁上端〜軒桁上端(峠):1尺6分
  欄間の敷居、鴨居:成 1寸1分× 3寸2分 欄間内法高:2尺4寸、天井長押:成 2寸7分×幅 2寸。
  天井回縁:成 2寸2分×幅 1寸6分、竿縁: 1寸4分角。
  天井回縁上端〜軒桁上端(峠):1尺5寸7分
   註 原文では天井上端より・・とありますが、図から、回縁上端より、に読み替えました。
部材寸法 
   註 原文には「木割」とありますが、内容から、部材の寸法の意と解します
  柱   削立て 4寸2分角
   註 この寸法は、江戸末期の建物(今井町・高木家など)と同じです。
  釣り束、便所柱 削立て 3寸6分角
  根太 成 2寸5分×幅 2寸
  軒桁 成 6寸×幅 5寸、ただし2間以上持放し(支点間が2間以上)の個所では成 1尺以上×幅 6寸とする。
  小屋各部の材寸については、別項の木割を参照のこと。
   註 次回以降に載せる予定です。
  軒の出 1尺5寸、野垂木は 2寸角、広小舞:幅 5寸×厚 1寸5分、鼻隠し:幅 4寸×厚 1寸。
  軒先の天井板は松 6分板、面戸板は杉 6分板とする。野地は 3寸(幅の)貫を小間返し(こまがえし)に打つ。
  布石の高さは地上 3寸ぐらいの高さとし、土台側面より外側へ 1寸5分〜2寸ぐらいだし、水垂勾配(みずたれこうばい)を付ける。
   註 水垂勾配:石上に水が溜まらないようにするために付ける勾配

「平屋建普通住家矩計 縁側の部 第三図(乙)」
総高さ は、沓石(くつ いし)上端〜縁桁上端を 1丈(10尺)7寸として、沓石の高さは地盤より 4寸上り。
柱は仕上り 3寸8分角、縁框は成 5寸5分×幅 4寸で本屋敷居上端より 1寸6分下りとして、沓石上端より框上端までの高さは 1尺9寸とする。ただし、縁幅4尺のときはs、水下がり 4分とする(水勾配 1/100)。
無目(むめ)は、成 2寸×幅 3寸4分、無目下端までの内法高は 5尺8寸とする。
一筋鴨居は、成 2寸2分×幅 2寸4分。
欄間の内法高:無目上端〜桁下端:の高さは 2尺2寸。
縁桁は末口径 6寸以上。根太:成 2寸5分×幅 2寸、縁板:榑縁張り幅 4寸×厚 8分。
垂木掛:成 3寸8分×幅 1寸7分、化粧垂木:成2寸×幅 1寸7分、淀:幅 3寸2分×厚 8分、広小舞:幅 5寸×厚 1寸5分、木小舞:幅 1寸×厚 8分を6寸間明きに打付ける。なお、小さな座敷の場合は、木小舞は幅 6分×成 5分ぐらいにして明きを 3〜4寸ぐらいとする。
化粧天井の勾配は 3寸2分(3.2/10)。上の野地(野屋根)は 4寸勾配とし、軒の出は 4尺とする。
縁側柱下の沓石は、上面を縁柱の直径の裏目(√2倍)として、四方の切下げ勾配は2寸5分の返し勾配とする。間内柱下の玉石は、径 1尺2寸以上とし、束下の玉石は径 9寸以上とする。
   註 返し勾配:45度より急な勾配の時、45度を差し引いた残りの勾配を言う。
なお、以上の各材料の大きさは、東京付近の場合の例であり、他の地方では、その地の状況に応じて斟酌すること。
第四図 甲(下図)は、普通住家二階建ての矩計で、東京市内の商家に多い出桁(だし げた)蔀戸(しとみ ど)造の矩計を示した例、第四図 乙は中等以上の二階建て住家の矩計である。各所の高さや各部材の大きさは、図から読取ってほしい。
この例の階段の踏面、蹴上の寸法を求めるには、この二者の寸法数を乗じて50に近接する数であることが肝要である。たとえば、踏面を 1尺とすれば、蹴上は 5寸となり、踏面を 8寸とすれば、蹴上は 6寸2分5厘となる。
もしもこれに手摺を設けるならば、その高さは普通 2尺2寸乃至 2尺3〜4寸とする。縁側に手摺を設ける場合もこれにならう。
   註 出桁造 「日本家屋構造の紹介−13」参照。

建地割(矩計)についての一般的な注意
柱に於ける貫穴の位置
桁行の地貫は、その上端が床板の下端に接するように差し、床板の受木:受け材を兼ねるようにし、梁行の貫は、床板下端より 1寸5分〜2寸ぐらい下げ、根太受木:受け材を兼ねる。中等以上の建物は、貫を兼用せず、根太受木は別途に設ける。
隅の柱の貫穴は、桁行を上小根枘、梁行を下小根枘として差し、楔もそれに応じて打つ。
なお、胴差、差鴨居の類の枘の小根も同様(桁行を上、梁行を下)とするのを通則とする。
貫の差し方
内法貫は、鴨居の上端より 5分ぐらい上げて差す。
地貫と内法貫との間に貫を二通り差すのを、四通貫と言い、一通り差すのを三通貫と呼ぶ。
天井貫は回縁上端と平らに差すものとする。
壁小舞・間渡し竹の位置
外壁壁下地の小舞は、縦の間渡し竹の穴を、軒桁下端の芯墨より外側に 4〜5分離して彫り、横間渡し竹の穴は、柱芯に彫る。竹の穴は、いずれも柱、貫、間柱などから 2寸離して彫るものとする。
   
                                                 「配置図」「平面図」「姿図(建絵図)」「矩計図」の項終り

     **********************************************************

以上お分りのことと思いますが、この書の矩計図の寸法記入が現在一般に奨められている矩計図のそれと大きく異なっています。
ここで示されている矩計は、建築者:施工者のための矩計なのです。
一方、現在一般に奨められている矩計は、建築者のためではなく、確認申請の審査者のための矩計なのです。
現在の矩計は、設計GLからの寸法を指示することが求められています。それゆえ、建築者(大工さん)は、仕事をするために、木造部の寸法を、あらためて計算しなければならないのです。
この書の矩計では、土台下端が基準点になっています。そこで表示される寸法で直ぐに仕事ができるのです。

設計図とは何か、考え直してみる必要があるように思います。確認申請のためにつくるものではありません!

次回は残りの図について紹介します。


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