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Channel: 建築をめぐる話・・・つくることの原点を考える    下山眞司        
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「日本家屋構造・中巻:製図編」の紹介−10 : 「十二 上等家屋玄関 各材仕口 建地割 及 木割」

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   これまで書いたシリーズものへは、今までの「カテゴリー」ではアクセスしにくいと思いましたので、
   シリーズのタイトル(あるいはその要旨)で一式括る形に変更しました(単発ものは従前のままです)。
   ただ、最終回から第一回へという順に並びますが、その点はご容赦。

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今回は、 「十二 上等家屋玄関 各材仕口 建地割 及 木割」の章を紹介します。
前回、懸魚の破風板への取付け方などについての説明がない、と書きましたが、それについての概略の説明が、この章にありました。ただし、解説図はありません。

この章も、「いかに外観を荘厳に見せるか」、つまり、「格の見せ方」に関わる解説です。したがって、その内容が直接現在の設計、そしてまた古建築の理解に役に立つ、というわけでもなさそうです。
そこで、今回も、用語等に註を添え、原文をそのまま転載するだけにさせていただきます。近代初頭の建物のつくりかたに関心のおありの方は、旧仮名遣いで読みにくいですが、原文でお読みいただければ、と思います。
  原書の頁ごとではなく、項目ごとにまとまるように紙面を編集していますので、行間など不揃いのところがありますが、ご容赦ください。

   註 冒頭の「まえがき」部分から、幕末〜明治にかけての「住居観」が見えてきます。
      ただ、それが一般庶民の観かたであったかどうかは分りません。多分、当時の都市居住者:主に旧武士階級:特有の観かただったのではないでしょうか。

      包込み枘差し(つんごみ ほぞさし)
      枘差の一種なり。枘を貫かずして途中にて枘先を留むるもの。地獄枘・・・も同一物なる仕口なり。・・・(「日本建築辞彙 新訂版」)
       以前、「信州・松代横田家の包枘差し」で、包枘差し=地獄枘との解説を紹介しています。
       当時、「日本建築辞彙」原本で「包枘差」で検索しても解説がなく、不明としておりました。
       「つんごみほぞ」で検索すればよかったのです。ただ、そういう「読み」があることは思い及ばなかった・・・・。
       ちなみに、「日本建築辞彙 新訂版」の後註「つんごみほぞ」の解説に以下のようにあります。
          『木造継手仕口呼称調査 中間報告』(1988)によれば、貫通さない平枘に
          「つつみほぞさし」茨城、「つんこ」群馬、「つんごみほぞ」埼玉、「つんご、つんごみ」京都、「つつみほぞさし」宮崎などの呼称例がある。
          ちなみに同調査で地獄枘についても、
          「つつみこみほぞ」埼玉、「つんごみほぞくさびうち」滋賀、「つんごみほぞ」宮崎など、同様の呼称例がある。
      引鐲鈷 引独鈷が普通の表記だと思います
      接合二材を雇い材(別材)によって引付けて接合する継手仕口、またその雇い材を言う。(「日本建築辞彙 新訂版」)
      例 雇い竿しゃち継 など  木鼻の取付け:懸鼻(かけはな)などにも使用
        文中の「木鼻は其木口に蟻を造りて柱に追入れに嵌めこむ・・」の解説は、頭貫の、木鼻部分のみを柱頭に取付ける場合の方法のことか。
      丸桁(がぎょう) 普通は「がんぎょう」と読んでいます。
      古代の建築では軒桁に円形断面の材を使うことが多く、以来軒桁を丸桁と呼ぶようになったようです。
        中国では建築用材に丸太を使うのが一般であったことから、我が国では円形断面=寺院の重要な「形式」と考えられた時期がありました。
         ⇒古代寺院には、垂木を角材からわざわざ円形断面に加工した事例が多数あります。
      裏甲、茅負の納めかたの項の説明箇所については、下図を参照ください。
      絵様(えよう)
      模様又は彫刻のこと。
      絵様决(えようしゃくり)
      化粧のための决(しゃくり)。下の第廿図其弐の茅負参照。
       
       

      杓子枘(しゃくし ほぞ)
      平たい枘のこと。かかりがよいように、枘を上向きにつくる場合もある。
      みのこ=蓑甲
      「破風屋根」の部位名。次回に図あり。

      前包(まえづつみ)
      「千鳥破風」の部位名。次回に図あり。
      サスリに組む
      同一平面に組むこと。

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各部の仕口は、化粧のためであっても、よく考えていたようです。
以前に、継手仕口の変遷を観ましたが、中世末あたりから、そういう傾向が現われてくるように感じています。
   この点については、2009年2月21日の「日本の建物づくりを支えてきた技術−25・・・・継手仕口(9):中世の様態」以下数回の記事をご覧ください。
全般に、時代が降るにつれ、架構よりも見えがかり:外観に視点が移ってきます。なぜそうなるのか、考えてみる必要がありそうです。
現在も「化粧」を重視する建物が増えていますが、残念ながら、どちらかというと、見えがかり重視で、つくりかたは粗雑な場合が多いように思います。
これは、見えがかりだけに関心が集中するとき陥る一つの「着地点」なのかもしれません。
何のために建物をつくるのか、その真の「目的」あるいは「意味」が見えなくなるのではないか、と思います。


もうしばらく、「上等家屋の玄関」すなわち「起り(むくり)破風造り玄関」「起り破風入母屋造り玄関」「千鳥破風玄関」「唐破風玄関」・・・の解説が続きます。
編集に時間がかかりそうです。

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